フィリピン代表コーチは日本人 きっかけは新聞 いつかプロ野球へ
9月に台湾で行われた野球のU18(18歳以下)アジア選手権で、フィリピン代表が4位に入った。代表コーチには、普段から現地で野球振興に力を入れる日本人がいた。関大野球部出身の片山圭二さん(47)だ。
片山さんは兵庫・姫路西高から関大へ進み、野球を続けた。大学卒業後は草野球をしながら、日本国内の企業で働いていた。フィリピンと関わるきっかけは、たまたま見た新聞の求人広告だった。
野球グラブを製造する日本企業の求人。好きだった大リーガーのグラブを作っていることを知り、「一気に針が振り切れた感じ」と飛びついた。27歳だった。
2年後の2006年、自社工場のあるフィリピン駐在員に。現地のセミプロリーグやクラブチームで選手としてプレーした縁もあり、2012年ごろからフィリピン代表チームに「お手伝いで」関わるようになった。
2017年からは、正式に代表コーチになった。現在はフィリピン野球協会のアドバイザーの肩書も加わり、野球の普及や発展を支えている。
片山さんによると、フィリピンの野球人口は2万人ほど。競技レベルは「フル代表で日本の高校くらい」と話す。投手の最速はフル代表で140キロ台半ば、U18だと130キロ台後半ほどだという。
フィリピンでは代表コーチ陣がU12(12歳以下)からフル代表まで、全カテゴリーの代表を指導する。内野手だった片山さんの役割は守備担当にとどまらず、「日本のヘッドコーチのような感じ」。
代表レベルでも指導や戦略のビジョンが明確にあったわけではない環境に、片山さんが日本流の野球を採り入れた。対戦相手の分析や、それに基づく選手起用や練習……。選手選考にも関わるため、普段から情報収集も欠かさない。
就労ビザで駐在しているため、代表チームでの活動はボランティアで、有休を使いながらこなしている。なぜここまでできるのか。
「野球が好きなんです」と片山さん。「みんな、ボコボコのグラウンドでも楽しんでプレーしている。僕自身、野球は楽しむものだともう一度思い出させてもらった」と話す。
日本をはじめとしたアジアの強豪との力の差は、まだある。1次リーグで対戦した日本には無安打で5回コールドで敗れ、2次リーグでも韓国と台湾に無得点に終わった。それでも「アジア3強と対戦できるのは大きい。レベルの高い野球に触れることは選手にとって大きな財産になる」と話す。
代表活動以外にも力を入れる。2019年にはクラブチーム「KBAスターズ」を立ち上げ、選手兼監督に就いた。「フィリピンにも大学野球のリーグはある。ただ日本のように、卒業後も野球を続けられる環境はあまりない。少しでも続けられる環境を作りたかった」
20代を中心に約30人が所属し、大会があるたびに集まって練習している。将来的にはアカデミーを作り、子どもたちにも野球を教えるのが目標だ。
代表での活動も、クラブチームでの活動も、片山さんの大きな夢につながっている。それは、フィリピンからNPBやMLBの選手を出すことだ。
インターネット中継などもあり、日本の高校球児の聖地「甲子園」も知られるようになった。大谷翔平(ドジャース)に憧れる選手もいる。野球への関心は低くないと感じている。
「日本の独立リーグでプレーする選手も出た。野球ができる裾野が広がれば、もっと変わると思う」。実現へ、日々異国の地で駆け回っている。
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