「一九八四年」に重なる日本の選挙 「政治とは」語ることを諦めない

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聞き手・佐藤美鈴
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 異例のスピード解散を経て始まった衆院選もいよいよ10月27日の投開票を迎えます。一票を投じるにあたり、大事にしたいことは何か、さまざまな社会課題と向き合う立場から考えます。

 イギリスで政治学を学んだ経験から、選挙や政治について「個が生き延びるための行為であり、国民主権の問題」と語る、英文学者の小川公代さん。政治への関心が高まらない現状をジョージ・オーウェルの小説『一九八四年』に重ねつつ、「ケアの倫理」をヒントに考える、選挙への向き合い方とは。

10・27を話そう⑧ 英文学者の小川公代さん

 ――選挙への向き合い方で大事にしていることはありますか。

 私は「どちらがいいか」という二元論に回収されない「ケアの倫理」をずっと論じてきて、そのなかで「ネガティブ・ケイパビリティ」(不確かさや疑いのなかにいられる能力)、つまり悩み続けることを諦めないことを考えてきているんですが、選挙についても同じことが言えると思うんです。

 選挙では与党と野党の二元論で、常に選ばされてきた国民は「どっちにも投票したくない」という風になってきてしまっているのではないでしょうか。誰に投票しても変わらない、こっちもあっちもダメだったら投票しない、と。

 でも、貴い一票なので、どこかに投じなければいけない。

 とりあえずは選ぶけれど、選んだほうを美化しすぎないことが大事だと思います。票は投じるけれど、100%納得しているわけじゃない。議論して分析したうえで、こっちもあっちもダメで、せめてここに投票したらこれは改善するという「あわい」の中で投票し、その後も注視し続けていくことが迫られていると思います。

 ――今回の選挙では、特にどのような点に注目していますか。

 自民党政権がこんなにも長く続いて課題も山ほどあるのに、なかなか投票率が上がらないという点です。この投票行動に影響を及ぼしているものは何か。外に向けられる関心が減っていて、あまりにも内向きなのでは、と思います。

 今の日本の政治はステータスクオ(現状維持)によって利益を得る人が幅を利かせています。他方、本来政治に声を上げなければいけない困窮している人たちは、生活が苦しいために政治や選挙に使う時間やエネルギーがとれない。背景には正規雇用と非正規雇用の格差もあると思います。本来、人は人間らしい生活を送ることでしか、投票をしたり、デモを行ったり、といった政治を行うことはできない。けれど、今は以前よりも多くの人がぎりぎりの生活を強いられている。さらに悪いことに、為政者はそうした人の声を聞こうとせず、政治は本来あるべき姿からどんどんかけ離れてきてしまった。

既得権益守る権力者 不満が政治に反映されず

 この構図は、ジョージ・オー…

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この記事を書いた人
佐藤美鈴
デジタル企画報道部|Re:Ron編集長
専門・関心分野
映画、文化、メディア、ジェンダー、テクノロジー
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