与野党伯仲の国会でどう決める? 放置された制度の不備を正す好機に

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青山学院大学教授・小宮京=寄稿
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青山学院大学教授・小宮京さん寄稿

 10月27日の第50回衆院選の結果は衝撃的であった。与党が自民党191、公明党24で合わせて215議席と過半数(233)を大きく割り込み、野党は、立憲民主党148、国民民主党28など旧民主党系が大きく議席を伸ばした。

 少数与党にとって今後、国会の議事運営は厳しいものとなるのは必至だ。一方、野党第1党の立憲は国会での野党連携を模索するが、順調とは言い難い。そこでキャスティングボートを握った国民民主の動向に注目が集まるというのが、現下の政治情勢である。

 筆者は、戦後の吉田茂から鳩山一郎への政権交代、平成の政治改革と政権交代、そして民主党政権から自民党の政権復帰といった、日本政治史上の出来事を研究してきたが、これほど政治が不安定化したのは、2012年の安倍晋三首相の再登板以降、自公連立が安定政権を築いて以来である。干支(えと)の一回りに合わせたかのような政治の変革期に、こうした状況を現出させた有権者としてどこに注目するべきなのか、過去の歴史を振り返りながら論じてみたい。

実は重要な国会の議長

 多数派形成――。今回の選挙後、この言葉を久しぶりに聞いた気がする。かつては政局が流動化すると、必ず大きなテーマとなってきた。

 たとえば約30年前の1993年。7月の第40回衆院選で自民は選挙前に分裂したこともあって過半数をとれないなか、小沢一郎氏(当時、自民を離党し新生党を立ち上げた)の多数派形成が功を奏し、日本新党の細川護熙代表が国会で首相に指名され、非自民の細川政権が誕生した。戦後長く続いた55年体制に終止符を打つ画期的な出来事として歴史に刻まれている。

 実はこの時、多数派形成がはかられたのは首相だけではない。

 衆議院議長もまた、そうであった。

 議長は比較第1党から出すという従来の慣例に従うなら、自民からになる。だが、連立与党という側面を重視するならば、比較第1党ではなく連立与党の筆頭格の社会党(当時)の土井たか子・元委員長が有力と考えられた。結局、連立与党で多数派を形成し、土井氏を議長に選んだ。憲政初の女性衆議院議長が誕生した瞬間だった。

 そもそも有権者にとって重要なのは、政府の長である首相だけではない。

 日本国憲法において「国権の最高機関」と称される国会で、どのように審議が行われ、どう決定されるかもまた、重要なはずである。議長の役割が重要になるゆえんである。

 衆参両院の議長が存在感を発揮した事例を見てみよう。

 野党の協力を得て参議院議長に就任し、参議院の独自性を重んじたことで有名な河野謙三氏のケースである。河野議長は「七三の構え」を標榜(ひょうぼう)、法案審議にあたり、野党7、与党3の比重をかける考えを実践した。それは数を頼んだ与党の強行採決への消極姿勢につながる。

 議長の権限のひとつに「議事整理権」がある。参議院規則第88条に「議長が必要と認めたとき又は議員の動議があつたときは、議長は、討論を用いないで、議院に諮り、議事日程の順序を変更し又は他の案件を議事日程に追加することができる」とあり、本会議における議事日程の順序変更を行うことができるのである。

 1975年、三木武夫内閣は税収増をはかるために、全野党が反対するなか、いわゆる酒・たばこ法案を提出した。国会会期末の7月、両法案は参議院大蔵委員会で強行採決された。さらに本会議でも両法案を通そうと、大平正芳蔵相が河野議長を訪ね、議事整理権を行使することを要請した。行使すれば両法案を通すことが可能だったからである。椎名悦三郎自民党副総裁や中曽根康弘幹事長らも河野議長への要請を繰り返した。しかし、河野議長は議事整理権の行使を拒否。両法案は廃案となった。

 これはあくまでも一例に過ぎない。しかし、議長の権限は実は強大であり、政権が重視する法案の成否を左右しうるのも事実である。とすれば、野党側が国会での慎重審議を求めるならば、議長を押さえる意義は大きい。多数派形成ができれば、議長候補を当選させることも可能であるし(平成の土井衆議院議長、昭和28〈1953〉年の堤康次郎衆議院議長)、あるいは河野参議院議長の例のように自民党の混乱に乗じて野党に好意的な議長の誕生を促すことも可能である。野党は今、この点にどこまで気が付いているのだろうか。

「ねじれ国会」がすでに出現

 ところで、現状では、仮に衆議院で野党が多数派を形成できても、参議院で行き詰まることは確実である。「ねじれ国会」がすでに出現しているからだ。

 「ねじれ国会」とは衆参の多…

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    千正康裕
    (株式会社千正組代表・元厚労省官僚)
    2024年11月10日14時47分 投稿
    【視点】

    しばらく政策の進みは劇的に遅くなるだろう。カギは与野党の国会議員の政策調整能力だと思う。例年1月~6月まで開催される通常国会では60本程度の内閣提出法案が提出・成立するが、来年は大分数が絞られれるだろう。 通常国会に提出・審議される法案の

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