第2回強制収容所記念館に届いた脅迫 歴史家が警戒するナチス犯罪の矮小化

有料記事揺らぐ国是 ドイツ右翼の台頭

寺西和男
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 チューリンゲン州の古都ワイマールにあるナチスドイツのブッヘンバルト強制収容所跡地を9月半ばに訪れた。監視塔の鉄門をくぐると、広大な敷地の中に再建されたユダヤ人らを収容したバラックが目に入る。遺体を焼いた炉も残る。多くの見学者の姿があった。ここでは、1937年から米軍によって解放される45年まで、ユダヤ人ら27万人超が収容され、5万6千人が死亡したとされる。

 ここを含む州内2カ所の強制収容所跡地にある記念館などを運営する財団のイエンス=クリスティアン・ワグナー理事長(58)が8月中旬、殺害予告のような脅迫を受けたとして大きく報じられた。記念館にあるユダヤ人慰霊碑の壁に、ワグナー氏の顔写真が貼られていたという。

【連載】揺らぐ国是 ドイツ右翼の台頭(全5回、初回はこちらから)

ナチスの過去から過激な右翼主義を警戒してきたドイツで、極右とも呼ばれる政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が支持を広げています。「反ナチス」の国是を揺るがしかねない右翼台頭の背景を探ります。

 ワグナー氏は、右翼政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が第1党に躍進した9月のチューリンゲン州議会選を前に、非営利団体の支援を受けて65歳以上の有権者がいるとみられる州内約35万世帯に「(AfDが政権をとれば)自由な民主主義の不可欠な基盤である、ナチスの歴史の批判的検証に深刻な打撃を与える」との懸念を訴える手紙を送った。脅迫を受けたのはその直後だった。

 この手紙について話を聞こうと、ブッヘンバルトの記念館にワグナー氏を訪ねた。

 旧ナチス親衛隊(SS)の管…

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この記事を書いた人
寺西和男
ベルリン支局長
専門・関心分野
欧州の政治経済、金融、格差、ポピュリズム