困窮の果て、「つながった」先は闇バイト 福祉が選択肢となるために
Re:Ron連載「知らないのは罪ですか?ー申請主義の壁ー」第11回
「税金の滞納が数十万円あった。SNSで日給15万円以上という見出しの投稿を見つけて応募した」(2024年11月22日、NHKの報道)
「SNSに『お金に困っている』という書き込みをしたら、『働いてみないか。大金を稼げる仕事がある』とメッセージが届いた」(23年8月21日、同)
全国で相次ぐ強盗事件や特殊詐欺事件。
犯行の実行役は「闇バイト」という形で募集され、その中には経済的困窮を理由に犯行に及んだ若者がいたことが明らかになっています。
経済的困窮に悩み、手立てを探していた若者たちは、なぜ社会保障制度の利用ではなく、「闇バイト」へ応募したのでしょうか。なぜ、社会保障制度は届かなかったのでしょうか。
自治体やNPOなどの支援団体が積極的に情報や支援を届ける手段の一つに「アウトリーチ」と呼ばれるものがあります。その構造は、「発見する」「つながる」「必要な支援とつなぐ」という三つの段階で捉えることができます。
発見し、つながり、つなぐ
まず「発見する」の段階では、支援を必要とする人々と出会うための取り組みが行われます。例えば、水道や電気の料金滞納がある世帯、学校で子どもの様子に変化がある家庭、近隣住民から心配の声が寄せられた世帯などの情報から、「何か困っているのではないか?」と仮説を立てます。
昨今では、インターネットの広告を活用し、困りごとに関するキーワードを検索した人に対して、相談窓口の情報を表示させるなど、デジタルアウトリーチといった取り組みも行われています。
次に「つながる」段階では、発見した人との接触を試みます。若者支援の現場では、引きこもり状態にある若者の自宅を訪問したり、路上や繁華街で夜を過ごす若者に声をかけたりする活動が行われています。最近では、各種のSNSを通じた相談対応も、「つながる」手段として多くのNPOなどで行われています。
そして「必要な支援とつなぐ」段階では、構築した信頼関係を基盤に、その人に合った具体的な支援を提供していきます。例えば、経済的に困窮している若者の場合、生活困窮者自立支援制度による相談支援や、住居確保給付金、生活保護など、利用可能な制度の情報提供や申請の支援を行います。
「闇バイト」といわれる犯罪行為の首謀者が行うアプローチも、この3段階で説明することができます。
ただし、それは支援とは正反…