自慢の吟醸酒に「香料入れているのか?」 世界が日本酒を認めるまで
ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に、日本の「伝統的酒造り」が登録された。その代表格といえる日本酒で、山形県天童市の出羽桜酒造は、国内の酒造会社の中でも早い1990年代後半から本格的な海外輸出を行ってきた。今では世界的人気を誇る「吟醸酒」だが、文化や風習が違う異国でのチャレンジは、当初は苦難の連続だった。
米どころである山形県は日本屈指の酒どころでもあり、別名「吟醸王国」と呼ばれる。名蔵元がひしめく中にあって、出羽桜酒造はフレッシュで華やかな香りと繊細な味わいの「吟醸酒」を早くから手がけ、ブームの火付け役となった。
4代目社長の仲野益美氏(63)が海外進出を意識し始めたのは80~90年代のことだ。
当時、ビールやワインなど輸入されたアルコール飲料の人気が高まる一方で、日本酒の存在感は薄れつつあった。先々、少子化が進めば飲酒人口が減り、日本酒の市場がさらに縮小するだろうと憂えた。「攻めの一手を打とう」と動き出した。
1997年、ニューヨーク、ロンドン、香港の主要都市に狙いを定め、本格的に輸出に乗り出す。
国内で評価されている吟醸酒なら、海外に出しても負けない自信があった。しかし、海外の人たちから思わぬ反応が返ってきた。
「香料でも入れているのか?…