証券の世界からジビエ猟師へ 害獣の焼却「もったいない」がきっかけ

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今林弘
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 証券の世界から猟師へ――。樋口晃司さん(40)は京都府綾部市で初めて、有害駆除されたシカやイノシシを扱う食肉処理施設を設立し、ジビエを販売している。転身のきっかけは「もったいない」との思いからだ。

 里山が迫る旧道沿いの集落に、樋口さんが設立したジビエ販売会社「いのしか」の食肉処理施設がある。

 室内には、一度に20頭をつるせる冷蔵庫や大型冷凍庫を備える。ステンレスの精肉台や床が隅々まで磨かれ、獣のにおいは皆無だ。

 ここで今年4月から10月、田畑をあらす害獣として駆除されたシカやイノシシ約200頭がジビエに加工された。シカの処理数では、9月末時点で市全体のシカの駆除分の約2割に当たる。

猟師とのつながり生かした「いのしか」

 市は、この施設のために、猟師が有害駆除した鳥獣をジビエとして処理したことを示す「ジビエ活用記録票」を新しく作った。有害駆除した先の新たな道筋として期待する。

 樋口さんは、大阪府高槻市兼業農家の長男。大学卒業後、大手証券会社に就職した。関東地方などで勤めた後、7年前に独立。大阪を拠点に金融アドバイザーとなった。

 狩猟は祖父と父の趣味だった。大学時代に父の勧めで猟銃の免許はとったが、狩猟に出たのは大阪に戻ってから。父の綾部市の狩猟仲間と獲物を捕った。その命をジビエとしていただき、味のうまさと狩猟仲間といろりを囲む楽しさを覚えた。

 そんなときに知ったのが、有害駆除された鳥獣の行く末。綾部市では猟友会に報償費を出し、捕獲したシカなど年間約2千頭のほとんどを専用処理場「中丹地域有害鳥獣処理施設」で焼却する。報償費、専用処理場の建設費、焼却費にあてられるのは税金だ。

 「もったいない。地元の猟師さんとつながりがある自分だからこそできることがある」

 樋口さんの心に火がついた。約80人の顧客を持つ金融アドバイザーをやめ、昨年2月に「いのしか」を作った。

■言葉出なかった「夏のシカの…

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