工房に、大豆の甘い香りがただよう。容器の中で固まっていくのは豆腐。お玉ですくいあげ、パックに入れると乳白色の表面がつやつやと輝いた。大浜大豆を使った「おぼろ豆腐」の完成だ。
能登半島の先端、石川県珠洲市狼煙町の道の駅「狼煙」で人気の逸品。この地豆腐は「奇跡が重なって生まれた」といわれる。
はじまりは、四半世紀前にさかのぼる。全国各地で「一村一品運動」が盛り上がった1997年。狼煙町西部の横山集落も意気込み、全戸加入の「横山振興会」を立ち上げた。2年後には、大豆とそばの生産を始めた。昔ながらの製法でそばを打ち、試食会やイベントへの出店を通して、集落の結束も強まっていったという。
ところが2003年、冷害と長雨で大豆が全滅してしまう。そんなとき、1人の農家が「おらとこに、豆があったさかい」と持ってきたのが、少し変わった大豆だった。
サヤとつながっていた部分の…
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