「限りない悔しさと憤り」田中熙巳さんが平和賞スピーチで託した信念

有料記事核といのちを考える

オスロ=花房吾早子
【動画】ノーベル平和賞授賞式でスピーチをする田中熙巳さん=2024年12月10日、ロイター
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 《核兵器廃絶をめざしてたたかう世界の友人のみなさん》

 受賞者の日本原水爆被害者団体協議会日本被団協)を代表し、田中熙巳(てるみ)さん(92)がノーベル平和賞授賞式で演説に立った。渡航の2週間ほど前まで体調を崩し、強い重圧を感じながら原稿を書き上げた。

 核兵器の使用をちらつかせて脅す国のリーダーや、核兵器の保有で戦争を抑えられると信じる人々がいる今の世界に、「限りないくやしさと憤りを覚えます」と投げかけた。

 そして、自身の人生について語り始めた。

 《私は長崎原爆被爆者の一人です》

「身内5人を無残な姿に」持病患いながら運動の先頭に

 中学1年生だった1945年8月9日、長崎市の自宅で原爆に遭った。父はすでに他界し、母と兄、妹2人と暮らしていた。みな無事だった一方、爆心近くに住む親族は違った。

 《一発の原子爆弾は私の身内…

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この記事を書いた人
花房吾早子
大阪社会部|平和・人権担当
専門・関心分野
原爆、核廃絶、ジェンダー、LGBTQ+
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    三牧聖子
    (同志社大学大学院准教授=米国政治外交)
    2024年12月10日22時32分 投稿
    【視点】

    核廃絶に加え、いくつもの強い訴えがあった。その1つは、戦争被害についての「受忍論」への痛烈な批判だ。「受忍論」とは、国家の非常事態である戦争では、みんなが被害を受けたのだから、生命・身体・財産に被害を受けてもそれは受忍しなければならない、と

    …続きを読む
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    錦田愛子
    (慶應義塾大学教授=中東政治、難民研究)
    2024年12月11日13時48分 投稿
    【視点】

    先月19日、ロシアのプーチン大統領は新たな「核ドクトリン」に署名し、核兵器使用基準引き下げを承認した。このように核兵器の使用が現実的な戦略の一環としてちらつかされるようになった現在、ノーベル平和賞を実際に核兵器の恐ろしさを知る人々の代表が受

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