第5回「元軍艦」運んだ下関のクジラ 乗り越えた「外圧」絶やさぬ庶民の味
1946年2月18日、日の丸を掲げた1隻の「元軍艦」が山口県下関市の漁港に入ってきた。
人間魚雷「回天」の運搬船から捕鯨船に改修された「第十九号艇」。捕鯨再開のため、各地から集められた船の一隻だった。
下関市立大教授の岸本充弘さん(59)によると、捕鯨母船やキャッチャーボートは戦争に徴用され、大半が戦火で失われたという。
戦後直後、国内の食糧難は厳しく、その解消とたんぱく源を確保するため、捕鯨再開が急がれていた。
連合国軍総司令部(GHQ)の許可を受けた船団は2月24日、小笠原諸島方面へ出港した。戦争で中断を余儀なくされた下関の商業捕鯨が、再び始まった。
「わー、くじらだ」
下関市北部の内陸部に住んでいた安冨静夫さん(84)は幼い頃、食卓に並ぶクジラの煮物料理に目を輝かせた。
自宅近くまで行商人がやって…
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