第8回戦時下の国から届くハチミツ 甘くない現実、それでも未来のため

有料記事一皿から見える世界

藤原学思 真田嶺
【動画】ウクライナ産ハチミツを扱う専門店
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 ミツバチは、空襲警報にどう反応するのか。3年前まで、そんなことは知らなかった。知りたくもなかった。

 「ハチはとても敏感な生き物で、不安を感じると飛び回ります」。キーウに暮らし、ハチミツの加工や輸出に携わるテチャーナ・プリトゥラさん(33)が言う。

 「ただ、適応力も高い。空襲警報にも時間が経つと慣れます。ウクライナ人と同じですね」

一皿から見える世界(6)

日本の食卓は、世界とつながっています。世界各地で取材する特派員が、食材にまつわる物語を追いかけます。後半には食材のメモもあります。

 広大な土地があり、ヒマワリなどの蜜源植物が豊富なウクライナは、世界有数のハチミツ生産国だ。国連食糧農業機関(FAO)によると、人口の1.5%が養蜂業に従事しているという。

 「甘い花の香りがあり、色は明るい琥珀(こはく)色。のどに少し苦みが残りますが、それはウクライナのハチミツが天然であることの証しです」

 一般家庭でも当たり前の食材…

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この記事を書いた人
藤原学思
ロンドン支局長
専門・関心分野
ウクライナ情勢、英国政治、偽情報、陰謀論
真田嶺
国際報道部
専門・関心分野
北米、中南米、移民、AI、ポッドキャスト
  • commentatorHeader
    阿古智子
    (東京大学大学院総合文化研究科教授)
    2025年1月5日11時30分 投稿
    【視点】

    メディアを通して残酷な戦争の現実に接しても、自分はどう向き合ったらいいのか、わからないで悩む人が少なくない。この記事は、身近な食べ物を通して戦場に思いを馳せ、食卓での会話を大切にしたいと思わせてくれる。戦争によって、ウクライナの女性はこれま

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    服部倫卓
    (北海道大学教授=ロシア・東欧)
    2025年1月5日13時4分 投稿
    【視点】

    細かい話になるが、ウクライナの養蜂従事者の数に関しては、70万人、人口の1.5%と言われることもあるが、40万人と言われることもあり、そうなると(戦争前の)人口の1%強くらいということになる。 いずれにしても、隠れた重要産業であることに変わ

    …続きを読む

連載一皿から見える世界(全12回)

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