受精卵での将来予測サービス「信頼性に懸念」 阪大などチームが検証
受精卵のゲノム(全遺伝情報)を調べ、体質や病気のかかりやすさなど、生まれる子の将来を予測する「PGT―P」と呼ばれるサービスがある。しかし、その結果の信頼性は低く、近い将来にも予測精度が改善する見込みは薄い――。そんな研究結果を、大阪大や東京大、理化学研究所などの研究チームが発表した。
PGT―Pは、身長などの体質や、糖尿病や心臓病といった、さまざまな要因が発症にかかわる病気に将来かかる可能性を、受精卵(胚(はい))のゲノムから予測するサービスで、「着床前検査」と呼ばれる技術の一つだ。
たとえば、体外受精で得た10個の胚の遺伝情報をそれぞれ調べ、「この胚は糖尿病のリスクが一番低い」などと予測して順位を付ける。その結果から、もっとも「望ましい」胚で妊娠をめざす、というコンセプトだ。「望ましくない」とされた胚は使われず、廃棄される可能性もある。
日本では、このような検査は認められていないが、米国などでは実際に検査サービスを提供している新興企業がある。
PGT―Pの要点となるのがリスク予測の正確性だ。一つの遺伝子の違いだけでも発症する希少疾患などと異なり、多くの病気の発症や身長などの体質は、一つ一つは小さな影響しかない、いくつもの遺伝子の違いの積み重ねの結果だ。生活習慣などの環境要因が大きく影響する場合もある。こういった病気のリスクを予測する手法が、これまでに複数、考案されてきた。いずれも、何万人もの膨大なゲノム情報から、いくつもの遺伝子の影響を統計的に分析して、病気のリスクなどを計算している。
六つの手法、コンピューター上で検証
研究チームは今回、そのうち6種類の主要なリスク予測の手法を使って、PGT―Pの結果の信頼性を検証した。
約5万人分の実際のゲノム情報をもとに、少しずつゲノムが異なる多数の胚をコンピューター上で作製。6種の予測手法をそれぞれ適用して胚をランク付けしたときに、異なる手法でも順位が一致するか調べた。
すると、ある予測手法で1位になった胚が、別の手法でも1位になるという一貫した結果が出る確率は30.0%(中央値)で、最も一致した場合でも41.6%だった。ある手法で1位だった胚が、別の手法では最下位になることもあった。
さらに、予測の前提となる膨大なデータをいくら増やしても、選ばれる胚の順位の一貫性は改善しないことも確かめた。
「倫理的問題につながる可能性」
研究を主導した阪大招聘(し…
- 【視点】
検査や予防は多ければ多いほど良いと思いがちだが、それはまったくの間違いで、事前の不確実な検査は有害だ。このPGT-Pも同様で、そのことを実証的に示した重要な研究の要点が的確に紹介されている。不要な情報が氾濫して混乱を招くのはネット空間が典型
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