韓国大統領が「非常戒厳」を宣布 官僚の弾劾訴追で「行政府がまひ」
韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は3日夜、国民に向けた緊急談話を出し、「自由憲政秩序を守るために非常戒厳を宣布する」と述べた。尹政権発足以来、多数の政府官僚の弾劾(だんがい)訴追が発議されるなどし、行政府がまひしていることなどが理由だとしている。これを受け、戒厳司令官が一切の政治活動などを禁じる布告令を出した。国民生活が大きく制限される恐れがある。
2022年に発足した尹政権は支持率が20%前後に低迷。4月の総選挙での与党大敗で国会も野党が過半数を占め、国政運営がままならない状況に追い込まれており、野党を力で抑え込んで自らの権力を守る非常手段に出たとみられる。
弾劾は最大野党の「共に民主党」などが中心になって推進している。尹氏は談話で、政権発足後に22件の政府官僚弾劾訴追案が発議され、「これは世界のどの国にも例がないだけでなく、建国以後に全く前例がない状況」と批判した。
さらに、予算についても「共に民主党」が政争の手段として利用しているとし、国家機関を乱すことで内乱を画策する明らかな反国家行為だと主張。「国会が自由民主主義体制を崩壊させる怪物になった」とした。
そのうえで、北朝鮮の共産勢力の脅威から韓国を守り、自由憲政秩序を守るために「非常戒厳を宣布する」と述べた。
戒厳司令官が出した布告令では、集会やデモなどを含む政治活動が禁止されるほか、世論操作などを禁止し、すべてのメディアと出版が統制を受けるとしている。「善良な一般市民は日常生活の不便を最小化できるよう措置する」としているが、影響は必至だ。
韓国では1961年に起きた軍事クーデターの際に戒厳令が宣布され、その後も80年代前半までたびたび出された。80年5月には、戒厳令下で軍政に抗議した市民が多数犠牲になる光州事件も起きた。