テレワークでアルコール依存になる人が増えているとか。私も危険水域です。
元々自宅で仕事をしているので、曜日を意識するのはスポーツクラブのズンバのスケジュールでした。いやなことがあっても、ズンバのレッスンに出ればすっきりします。そして、夕方か夜のレッスンに出ると寝つきがよくなるので休肝日に設定していました。
緊急事態宣言でスポーツクラブが休館。YouTubeでズンバの動画を見ながら踊ってみましたが、下の階に響かないよう動きは小さくなるし、ストレス解消になりません。
さすがに日の高いうちから飲むことはありませんが、気が付いたら毎晩のように飲酒。これではいけないと見たのが、ヨハン・ハリによるTED「依存症に対する間違いだらけの知識」です。
(日本語の発音字幕)中毒について知っていると思うすべてが間違っている|ヨハン・ハリ
アルコールに限らず薬物、ギャンブル、ネット、ゲームなどあらゆる依存症の原因は「人とのつながりが絶たれる」ことだというのです。
ねずみを使った実験では、一匹だけでケージに入れられ、普通の水と薬物の入った水を置くと、ねずみは薬物入りの水ばかり飲んで中毒となり死んでしまう。
ところが、ネズミの好物のチーズや遊び道具、そして仲間といっしょにケージに入れると、薬物入りの水を飲まなくなったという実験が紹介されます。
これの人間版がベトナム戦争。アメリカ軍兵士の20%がヘロインを摂取していたのに、帰国後は95%がヘロインをやめました。
そしてポルトガルの薬物依存対策。すべての薬物を合法化し、依存者が社会と再びつながりを作るために予算のすべてを使うことにしたのです。仕事を提供し、ビジネスを始めるなら小口融資。目標は「すべての依存者に毎朝ベッドから起きなければいけない何かを与える」。
The Opposite of Addiction is Connection(依存の反対はつながり)
アルコール依存症については、映画『ドント・ウォーリー』も参考になりました。アマゾンプライムで観ることができます。
主人公である車いすのイラストレーター、ジョン・キャラハンを演じるのは、『ジョーカー』のホアキン・フェニックス。まさに怪演。演じる役によって変幻自在です。
アルコール依存症のキャラハンは自助グループ(アルコホーリクス・アノニマス/AA)の力を借りて立ち直ります。主催者のドニーを演じるジョナ・ヒルが『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の金まみれの下品な副社長だったのにもびっくりしました。
ドニーの台詞。
I think I’m still a little selfish. I was helping you guys a lot, because it was helping me.
私は利己主義者だ。自分を助けるために君たちを助けた。
祖父母の遺産を相続して何不自由ない生活を送っているドニーは、元アルコール依存症で、自宅を開放してAAのミーティングを開いて立ち直りました。
結局、アルコールに依存しないためには人とつながらなくてはいけない。自宅にこもっていると、家族以外とつながる機会を失います。一人暮らしならさらにリスクは高まるでしょう。
ヨハン・ハリは「面と向かって関係を築き上げた友人こそ助けになり、ツイッターのフォロワーやフェイスブックの友達はあてにならない」と言いますが、コロナは人間関係のルールも大きく変えます。今やネットを使わずに人とのつながりは保てません。
そこで私は日本語学校のかつての教え子の何人かに「元気ですか」と短いメールを送ってみました。
イギリス、ベルギー、ドイツ、フィンランド、ロシア、アメリカ、カナダ、メキシコ、香港、台湾…。たくさんの学生から返信がありました。大学生はオンライン授業、社会人はテレワークで、みんな友達と直接会うことはできない日々を送っています。日本語は忘れてしまったのか、グーグル翻訳の奇妙な日本語と英語を併記する学生もいます。
ほぼ国境が封鎖されている今、彼らにとって東京で日本語を学んだ体験をしみじみ思い出したのでしょう。「先生、私のことを思い出してくれてありがとう」と書いてくれた学生もいますが、お礼を言うべきなのは私のほうです。ささやかなつながりでも、明日はどんなメールが来るか、朝、布団から抜け出さなくてはいけない理由を与えてくれます。
昨年訪れた長崎の思案橋横丁。この先にあった遊郭に行くか帰るか、思案のしどころで名付けられたそうです。
外で飲むなら、飲むか帰るか思案しますが、家飲みは際限なく飲んでしまうので本当に危険です。