台北で楽しみにしていたのが、スペイン巡礼で会った台湾人の葉さんとの再会です。
小さな街の同じアルベルゲ(巡礼宿)で顔を合わせました。モンベルのジャケットにハローキティの水筒を持った葉さんをてっきり日本人だと思って「こんにちは」と声をかけのがきっかけです。夕食の出ない宿だったので、二人でバルに食べに行きました。葉さんが写真を撮り、lineで送ってくれました。
翌朝、葉さんは長い距離を歩くので私より早めに出発。玄関で見送りました。「台湾に来ることがあったらぜひ会いましょう」と言ってくれたのを思い出し、連絡してみたのです。
スペイン巡礼で知り合ったもう一人の台湾人女性も呼んでいいかと聞かれ「ぜひ会いたい」と答えました。楊さんです。どちらもヨウさんと読めますが、葉さんは英語瓢湖がJoだったので葉さんを「ジョウさん」、楊さんを「ヨウさん」と呼ぶことにしました。
小籠包を食べたいとリクエストしたところ、鼎泰豊も候補として送られてきましたが東京にも支店があるから永康街の金鶏園へ。蟹味噌入り小籠包が絶品でした。
楊さんとは初対面でしたが、カミーノの思い出話で盛り上がり、まるで旧知の三人組のよう。話は尽きず、場所を移動することに。
東京にはもうなさそうな古い日本家屋を改装したカフェです。
この会合、私も楽しみにしていましたが、葉さんと楊さんはそれ以上に楽しみにしていたようです。「二人とも忙しいところ、わざわざ時間を取ってもらって」とお礼を言うと「今日はこのために一日中空けてある」とのこと。スペインから帰国以来、抜け殻のようになってしまい、何もやる気がしないというのも私と同じです。
葉さんと私は一回り違いで同じ子年。楊さんはさらに一回り下の子年。三人の子年の女が集まったわけです。
51歳の葉さんは英国留学の経験を活かして貿易会社で働いていましたが、スペイン巡礼のために退社。「同じ業種に再就職するには年齢が高すぎてむずかしい」と言いつつ、あまり焦っていないようす。この春にはお姉さんの東京マラソン応援のために来日したというし、悠々自適なのかもしれません。39歳の楊さんは小児科医。「なかなか条件に合うところがなくて」とのんびり職探しをしています。
一回り、二回り下の人とこんなに打ち解けて交流できるのは私の精神年齢が幼いからでしょうか。レストランでもカフェでも、二人は私に払わせてくれません。
カフェで話し込んで夕刻近くになり、夕食も誘われましたがまた奢ってもらうことになりそうなので、お開きにすることにしました。ホテルから地下鉄を乗り継いで永康街まで出たのですが、バスならホテル近くまで直行で行けると二人はバス停まで送ってくれました。私が乗るバスが来るまで二人で待ってくれ、バスの運転手さんに「この人を○○のバス停で降ろしてあげてね」と念を押して見送ってくれました。何から何まで世話になりっ放しです。
申し訳なくて「次は絶対に東京に来てね」と念を押しておきました。二人とも何度も日本旅行を楽しみ、次は四国八十八か所か熊野古道を検討しているようです。
四国は距離が長くてなかなかハードだし、熊野は宿を予約するのが大変です。東京から近い秩父三十四か所を提案してみました。スペインのカミーノとの提携話が持ち上がっているそうだし。
カミーノ・マジックはスペインを離れても消えませんでした。同じ時期に巡礼したというだけでここまで親しくなれるとは。一度行けば何度も行きたくなるというのがよくわかりました。