*27日ブログも更新しました。1週間前にNHKで放送されたドキュメンタリーWAVE
希望と絶望のティファナ
~トランプ就任 国境の町は今~このブログでも何度か書いている、
メキシコ国境の町、ティファナは
私が住んでいたカリフォルニア州、
サンディエゴと国境を接している。
私自身も、在学中に日本のある企業で
アルバイトをさせてもらっていた関係で、
その会社の工場のあるティファナへは
仕事で何度か国境を越えて行ったことがある。
仕事以外にも、サンディエゴに住む人にとって、
ティファナへ行くというのは、国を越える感覚より、
隣町へ行く・・・という軽いもので、
プライベートでもたまにティファナに飲みに行ったり、
買い物をしに行ったことがあった。
一度など、アメリカの歯医者は高いので、
お金を節約しようと、ティファナの
歯医者まで行ったこともある。
ただ、アメリカ側からは行きはよいよい、だけれど、
メキシコからアメリカへ戻る時には
国境付近は渋滞が続き、警備も検査も念入りとなる。
実際、あまりにも簡単に国境を越えられるということで、
日本からの留学生がパスポートを忘れて入国し、
アメリカへ帰れなくなり、数日間拘留された・・・ということも。
私自身も一度、パスポートを忘れて入国してしまったことがある。
その時は、カリフォルニア州の免許証を出して、
アメリカ人を装い、なんとか国境での検査を免れた。
初めてティファナを訪れた時のショックは
今でもしっかりと覚えている。
23、4歳くらいだった私は、メキシコの現状など
なにも知識を持ち合わせておらず、
国境を越えた途端に、目の前に広がる世界に
衝撃を受けた。陸続きの国、一本の国境を
隔てたそこには、盲目の老婆を連れた幼い子や
身体の一部を失った人々が物乞いをし、
車をめがけて少年たちが必死にフロントガラスを
拭きにやってきて、少女たちは花売りをしている。
少し先を行くと、砂埃の舞う、インフラの整っていない
デコボコの道路と、その両脇に並ぶ土産物屋。
町中に行ってもさほど光景は変わらない。
サンディエゴから多くの若者たちが遊びに行くので、
そこでも至る所に物乞いがいる。
カリフォルニア州では、21歳にならないと
お酒が飲めないため、18歳以上が飲酒可能な
メキシコまでお酒を飲みに繰り出す若者も少なくない。
国境付近では、不法入国を試みる人々が後を絶たない。
砂漠を越える際、国境警備隊に銃で撃たれたり、
道に迷って命を絶つ人たちもまた、なくなることがない。
運よく国境を越えて不法移民として
アメリカに住むメキシコ人も、
いつ強制送還されるのか怯えながら生活をしている。
一緒にレストランで働いていたメキシコ人たちは、
そのほとんどが偽造永住権を持っていた。
いわゆるがさ入れが入った際に、
身分証明証を提出しなければならないからだ。
店のオーナーも、不法移民と知っていながら雇う。
アメリカ人に保証されている最低賃金よりも
さらに低い給料で雇うことができるからだ。
そして、いざ、移民局の抜き打ち捜査が入っても、
メキシコ人たちが永住権を持っていれば、
それが偽造だと十分知っていても、
オーナーは知らなかったと言い逃れができる。
不法入国して、子どもが生まれれば、
その子どもはアメリカ国籍を取得できる。
けれど、両親は国籍を取ることはできない。
だから、摘発されれば子どもだけアメリカに残し、
両親だけがメキシコに強制送還される。
トランプが早速動き出した。
壁を作ると宣言し、不法移民を退去させる。
壁にかかる費用はメキシコが持てと、
めちゃくちゃな外交をしている。
イスラム教7か国の人々の入国を停止させ、
入国できずに管理局では大混乱が起きている。
米大使館をエルサレムに移すという。
国内では、妊娠中絶に反対する
大統領令に署名をした。
移民の国、多様性の国、多くの問題を抱えながらも、
人種や宗教の違う人々が何とか共生できる国を
理想として歩んできたのではなかったのか。
トランプ政権は、そのすべてを後退させていく。
人間の敵対心を煽り、分断させる。
移民排除のニュースが流れるたびに、
あの頃ともに働いていた彼らの顔が思い浮かぶ。
イスラム教徒の上司たちもいた。
人生の節目、節目で助言を頂いた人たち。
大学では、イスラム教徒の学生たちが、
一日5回の礼拝をキャンパスの芝生の上で
行っている光景は見慣れたものであり、
それは日常の中に溶け込んでいた。
ことさらに自分の力を誇示し、
批判をされることに寛容さのかけらもなく、
徹底的に相手を攻撃することで
自分の自尊心をまもろうとする。
成熟しきれていない、子どものような
70を過ぎた男に、大国アメリカは振り回されている。
共に歩むための道を、それがどんなに困難であろうと、
自国の繁栄だけではなく、他国と模索していく。
「先進国」と言われる国々の長たる人間たちの使命ではないだろうか。