筋肉ちくわを食べてマッチョに 老舗練り物店開発「戸惑うかも」

湯川うらら
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 香川県高松市の老舗練り物店が、手軽にたんぱく質を補給できる「筋肉ちくわ」の販売を始めた。コロナ禍がきっかけで新商品開発に取り組み、管理栄養士の監修のもと、動物性、植物性たんぱく質が豊富な「新感覚のプロテインフード」を完成させた。

 筋肉ちくわを開発したのは高松市中央卸売市場内にある「矢野商店」。原料は、白身魚のスケトウダラのすり身、ナッツから作ったプロテインパウダーなど。石臼で練り込み、1968年の創業直後から使っている専用機械で一本一本じっくり焼き上げる。魚のうまみとナッツの香ばしさ、かみ応えが特徴だ。

 1本(65グラム)に含まれるたんぱく質は16・5グラムで、従来品の約1・8倍。糖質は3・8グラムと控えめ。筋力トレーニング後の身体の回復を助ける「オメガ3脂肪酸」も含まれている。代表の矢野耕資さん(58)は「ちくわと思って食べると戸惑うかもしれないが、味と栄養のバランスを考えた安心安全なものになっています」と胸を張る。

 矢野商店は創業以来、主に業務用のすり身を製造してきた。しかし、新型コロナウイルスの影響で仕出屋や料亭からの注文が激減。昨年4、5月の売り上げはコロナ禍前の約2割になった。「一般のお客さん向けの新商品を増やさなければ」。矢野さんが思案していたところ、知人で管理栄養士の岩木博久さん(35)=高松市=が「筋肉ちくわ」の開発を持ちかけた。

 「筋肉マニア」を自称する岩木さんは、砲丸投げ競技に打ち込んだ学生時代に筋肉がつかず悩んだ経験から、手軽に食べられるプロテインフードを作りたいと考えていた。また、スケトウダラが筋肉増加に効果があるという研究結果があり、着目もしていた。

 矢野さんは当初、「良い案だけど、お客さんに受け入れてもらえるのか」と半信半疑だった。だが、生産量が減り開発にあてる時間があることや、以前に岩木さんと別のちくわを共同開発した実績があったことから意を決した。

 昨年夏ごろに開発に着手したが、商品化は難航。糖質を抑えようとでんぷんを使わないため、原料がまとまりきらず、プロテインパウダーのパサパサとした食感が残るのが課題だった。粘り気のある白身魚のグチを混ぜたり、何度も栄養成分を確認したりして、味と栄養成分ともに納得いく仕上がりになった。

 岩木さんは「トレーニングをしている人だけでなく、高齢者や忙しい人の栄養補給にもなる。長く愛される商品になってほしい」とエールを送る。

 完成した今年5月にクラウドファンディングサイト「Makuake」で予約購入を募ると、101人が申し込み、約1500本が売れた。一般販売を始めた9月7日以降は、体力づくりを考える高齢者からの注文もあった。矢野さんは「たくさんの人に興味を持ってもらえて驚いている。コロナ騒ぎが(開発に)奮起するきっかけになった。商品の改良にも挑戦して、販路を拡大していきたい」と話している。

 10本入り2600円(税込み)。電話(087・862・5633)またはオンラインショップ(https://yanoya.official.ec/別ウインドウで開きます)で注文できる。

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    磯野真穂
    (東京工業大学教授=応用人類学)
    2021年11月4日11時39分 投稿
    【視点】

    食べ物の名称は、その名称の由来に思いを馳せると実に面白いものです。 例えば、この記事にある、竹輪(ちくわ)は,「串を抜いて小口から切るとその断面が竹を輪切りにした形に見える」ことに由来しており、この名称の利用は1674年(延宝2)刊の

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