花岡瑛斗くん(18)と宮林希(のぞみ)くん(18)は、同じ先天性の心臓病「左心低形成症候群」を抱えて生まれた。
ともに長野県立こども病院で手術を受け、幼なじみとして育った。
去年の夏、瑛斗くんの妹りりあさん(14)が書いた作文が、人権をテーマにした作文コンクールで佳作に選ばれた。
兄の補聴器にまつわるできごとについて書いた作品だった。
瑛斗くんも希くんも病気や治療の影響で、幼いころから一定の周波数の音に対する聴覚の障害があった。
希くんは片方の耳での障害で、日常生活に大きな問題はなかったが、瑛斗くんは両耳で、高音領域が聞こえなかった。
電子レンジや体温計の「ピッ」という音が聞き取りにくい。
小学生のころは、まだ声変わりしていない同級生も多く、友だちの高い声が聞こえづらいこともあった。
音だけでなく、相手の口の動きや表情を頼りにして理解しようとしていた。
ただ、学校の先生が顔を向けずに話すとわからないこともあり、補聴器をつけていた。
りりあさんの教室に瑛斗くんが来たことがあった。
「えっ、補聴器? なんだよ、おじいちゃんじゃん」
クラスの1人がそう言ってからかった。
りりあさんは悔しかったこと…
連載患者を生きる
この連載の一覧を見る- 服部尚(はっとり・ひさし)朝日新聞記者
- 福井支局をふり出しに、東京や大阪の科学医療部で長く勤務。原発、エネルギー、環境、医療、医学分野を担当。東日本大震災時は科学医療部デスク。編集委員を経て現職。