「記者さん、わかりますか?」身代金ウイルスに侵された病院の苦悩

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玉木祥子 井上正一郎 編集委員・須藤龍也 遠藤隆史
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 静岡県内のある総合病院サイバー攻撃を受け、システムが停止に追い込まれた。診療にも影響が出ている――。

 そんな情報を聞いた記者は昨年12月上旬、病院を訪ねた。対応した事務長とは事前に何度か交渉を重ねていた。その結果、病院名を記事で明かさないことを条件に、取材に応じてくれた。

 事務長の説明は、おおよそ次のような内容だった。

 昨年10月2日、病院のコンピューターが「ランサムウェア」(身代金ウイルス)に感染したことが発覚、電子カルテのデータが暗号化されシステムが停止したという。

 これは、同様に電子カルテシステムのデータが暗号化され、2カ月近くにわたり病院の機能が事実上停止した、徳島県つるぎ町の病院と同じ被害だ。

 サイバー攻撃が地域医療を脅かし、命にかかわる深刻な被害を引き起こしている。徳島の件をきっかけに、全国の被害が相次いで明らかになっている。今回、取材に訪れた静岡の病院もその一つだ。

事務長が記者に訴えた窮状

 取材に応じる決断をした理由も判明した。

 「少しでも情報が欲しい」。事務長は初対面の記者にそう訴え、パソコン画面の印刷コピーを示した。

 被害を受けた直後の画面を撮影したものだという。画面に反射した光沢としま模様が映り込み、その中に英文のメッセージが浮かんでいた。全体的に不鮮明で、慌てて撮影した様子がうかがえる。

 かろうじて読み取れた英文には、「メールを送ればファイルの回復を保証する」というメッセージが書かれていた。ランサムウェアを仕掛けたサイバー犯罪集団が残した「犯行声明」だった。

 事務長は言った。「何者か見当がつかない。なぜ私たちが狙われたのか。記者さん、わかりますか?」

 電子カルテシステムを開発した大手IT企業に調査を依頼したが、具体的な言及はなかったという。

医療機関を狙ったサイバー攻撃が相次いでいます。厚生労働省は被害を報告するよう求めますが、厚労省が作成した対策ガイドラインそのものに課題があると専門家は指摘します。その問題点を掘り下げます。

サイバー犯罪集団の狙いは

 記者はその場で旧知のセキュリティー専門家に連絡を取り、画面コピーをスマートフォンで送った。

 結果はすぐに返信されてきた…

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