元警視総監が語る警察の「失敗」 銃撃事件「ローンウルフに備えを」
複数の警護員が配置されていながら、車道を歩いて背後に近寄ってきた男による銃撃をなぜ防げなかったのか。安倍晋三元首相が銃撃され殺害された事件は、警察の警備・要人警護の不備を浮き彫りにした。
どこにどんな問題があったのか、立て直しを迫られる警護警備の課題は何なのか。警察官僚として長く警備畑を歩んだ高橋清孝・元警視総監は、組織に属さない「ローンウルフ(一匹おおかみ)」型の事件に対する備えの必要性も指摘する。
――参院選の遊説中に起きた今回の事件では、警察による警備、警護に問題があったと言わざるを得ません。問題点をどう見ていますか。
すべての点で問題だったと考えています。現職時代に長年、警備警察に身を置き、選挙中の政治家の警護も経験してきました。何事もなく終わらせるのが警護警備の任務、目的で、今回、重大なことが起きてしまったことは警察の大きな失敗であり、負けと言えます。負けの原因、要因は多くあります。
――失敗の要因を具体的にはどう見ていますか。
まず、選挙中の街頭演説の場所の設定の問題があります。
場所は基本的に候補者や政党の側が決めます。警察は相手の要望もふまえつつ、安全上の観点から意見を言います。ただ、選挙活動の自由や、聴衆と触れ合いたいといった候補者側のニーズも尊重されるべきで、安全との調和を考えて、警備を実施しないといけません。
そうしたなかで、今回の場所は警備上好ましくなく、なぜあの場所にしたのか疑問に思います。360度、どこからも安倍氏が見える上に、後方には車道があって車などが走れる。場所は候補者側の意向だったとしても、警察は安全確保の観点から検討すべきでした。360度あいている形はほとんど聞いたことがありません。あの場所でどうしても街頭演説をするというのであれば、後方に車両を止めておくなどして遮蔽(しゃへい)、目隠しをするなどの対応が必要だったと思います。
現職時代、警備の中でも、選挙中の街頭演説が一番難しく、怖いと感じていました。起きてしまったことについて今の警察の責任はもちろん大きいですが、いまの警護警備のやり方が今回ポンと出てきたわけではなく、私も含め、これまで警察がやってきた流れの中で起きたことと言えます。
――今回の事件では手製の銃が凶器として使われました。銃器を使う襲撃などへの対応という点はどう考えますか。
これまで政治家を狙った事件は投石や刃物などを使った攻撃が多かったのですが、警察は銃器による攻撃も念頭に、警護対象者と聴衆に一定の距離をとるなどの対応をしてきました。ただ、今回、銃器を使った攻撃を許してしまったことを重く受け止め、警護対象者を周囲から遮蔽する仕方を含め、対策を強化していく必要があると思います。
――山上徹也容疑者は、安倍…
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