「変化」を生業にする母と娘がいる。長崎市の小林奈々さん(41)と中学2年の妃那(ひな)さん(14)。2人とも、踊り手の面が瞬時に変わる中国の伝統芸能「変面」を演じる変面師だ。変幻自在なマスクの下に、どんな素顔が隠されているのか。
Changin’(5)
2025年は巳年。脱皮を繰り返し成長する蛇のように、「変化」しながら前に進む九州ゆかりの人たちに話を聞きました。
《マントをはおり、面をつけた2人がステージに現れた。2024年11月、長崎市でのイベント。軽やかに舞い、扇子やマントで顔を隠したと思うと、パンダの面が猿に。猿が武将に。武将がお姫様に。奈々さんの人生も変化の連続だった》
奈々さん(以下、奈) 工業高校を卒業後、将来の目標があったわけでもなくて、病院事務の仕事につきました。25歳で結婚、27歳で娘を出産。幸せだけど平凡で、自分を生かしたいと模索していました。娘が1歳を過ぎ、パートや契約社員で働きましたが、しっくりこなくて。
テレビ局で秘書をしていた時に転機があって。中国の歴史文化を伝える「長崎孔子廟」の博物館長だった藩秀貴(ばんひでたか)さん(60)と知り合い、「親子で変面をやらないか」と。思いがけない誘いで、私にはできないと思ったんですが……。
妃那さん(以下、妃) 「やってみたい」と言いました。イベントで見て、格好良かった。シャイで人前に出るのは苦手だったけど、面をつければ大丈夫かなって。
奈 「門外不出」とされる変面の仕掛けは、藩さんの妻に教わりました。その後は千葉県在住の変面師の指導も受け、変面の映像をなめるように見て動きを学び、娘に振り付けを教えました。
《妃那さんは小学1年でデビューし、長崎孔子廟のイベントなどに出演。「最年少変面師」としてメディアにも紹介された。奈々さんは藩さんのもとで副館長に就き、孔子廟の企画や運営にあたった》
妃 当初は1回の演技で3枚…
【初トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら