第23回ウクライナ人の私、ロシア人の彼 小さな結婚式の後、戦争は始まった

[PR]

連載「それでも、あなたを」 ロシア・ウクライナ編①

 ロシア軍の侵攻が始まり、キーウの街に轟音(ごうおん)が響いた日。ウクライナ人のユリア(32)は西をめざし、車のハンドルを握った。

 爆破された橋や、避難を急ぐ車列を避けながら進む。車内に友人の声が響く。「私たちを攻撃しているのは、あなたの夫の国だ」

 そうだ。私はロシア人の夫、アルチョム(32)に会いに行くため、ウクライナを出るんだ。ただ黙って、聞いていた。

 アルチョムを最初に見かけたのは2019年2月、モスクワで働いていた時のことだ。

 友だちから誘われたパーティーの会場に一緒にいたが、特に話もしなかった。

 それから8カ月後の友人の誕生日会。

 また、あの人がいる。

 なぜだか顔を覚えていた。自分でも不思議だ。話してみると、早口の自分とは正反対の落ち着いた口調で、やさしい声をしていた。

【連載】それでも、あなたを 愛は生きる力に

国家間の衝突、権力による抑圧、偏見や差別……様々な苦難を生き抜く中で出会い、また、絆を深めていく2人がいます。その物語をつむぎ、背後にある国際問題のリアルを伝えます。

お互い恋人がいたけれど…

 6年前に自転車でコーヒーの…

この記事は有料記事です。残り2298文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【初トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

この記事を書いた人
宋光祐
パリ支局長
専門・関心分野
人権、多様性、格差、平和、外交
ウクライナ情勢 最新ニュース

ウクライナ情勢 最新ニュース

ロシアのウクライナ侵攻に関する最新のニュース、国際社会の動向、経済への影響などを、わかりやすくお伝えします。[もっと見る]

連載 それでも、あなたを 愛は生きる力に 2022-23(全27回)

この連載の一覧を見る