第20回日本は株主資本主義に突き進むのか 「空中戦」の陰にある意外な実態

有料記事資本主義NEXT 会社は誰のために

聞き手・稲垣千駿
[PR]

 市場から自社の株式を買い戻す「自社株買い」に踏み切る日本企業が増えている。会社は株主だけではなく、従業員や取引先などすべてのステークホルダー(利害関係者)の利益を考えるべきだという新たな資本主義の潮流に逆行する動きにもみえる。しかし、コーポレートガバナンス(企業統治)に詳しい早稲田大学の宮島英昭教授は、「日本では自社株買いはまだ足りないかもしれない」と言う。それはどうしてか。

 ――日本企業の自社株買いが増えています。

 「理由はいくつか考えられます。教科書的な説明の一つは、ある企業が収益を上げたけれど、周辺にビジネスチャンスが少ないケース。投資する機会が限られていると言えるかもしれません。また、企業が自社の株価を相対的に低いと考えているケース。株価が割安だという経営者からのシグナルです。株式を購入し、株価を上げる狙いがあります。日本では、(親しい企業同士の)株の持ち合い解消が自社株買いをもたらす側面もあります。友好的な関係者が保有する株が市場で売却され、海外のヘッジファンドなどに買われて外部株主が増えると困るため、自ら買うというものです」

 ――日本では賃上げや設備投資が伸び悩んでおり、自社株買いに対し、株主の利益ばかりを優先しているとの批判もあります。

 「日本の自社株買いの議論は、実態の正確な認識を欠いており、空中戦になっていると思います」

「合理的選択」としての自社株買い

 ――どういうことですか。

 「この議論は、本来は設備投…

この記事は有料記事です。残り2562文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【初トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

この記事を書いた人
稲垣千駿
経済部|トヨタ自動車担当
専門・関心分野
自動車・証券業界、企業統治、金融政策

連載資本主義NEXT 会社は誰のために(全27回)

この連載の一覧を見る