第6回木造の名古屋城、エレベーター設置は無理? 専門家が語る構造的問題
名古屋城天守の建て替えで名古屋市は「史実に忠実な復元」を掲げている。どんな文化的な価値があるのか。
各地の城の修復に携わり、名古屋城天守の木造復元を検討する市の有識者会議のメンバーでもある名古屋工業大学の麓(ふもと)和善名誉教授(建築史)に聞いた。
「最も史実に忠実かつ正確に、かつての姿を再現することができる」
――「史実に忠実な復元」とは何ですか。
可能な限りかつての天守と同じ寸法、意匠、材料、工法によって復元することです。ただ木材の年輪や産地、伐採年まで一致させることは不可能だし、木材の加工はそもそも大工が異なるため、まったく同じというわけにはいかない。銅板も現在は工業製品のため、製法や純度まで一致させることは不可能です。
――名古屋城では「史実に忠実な復元」がどこまで可能なんですか。
戦災で焼失前の名古屋城天守は旧国宝に指定されていました。当時の戦争の状況もあり、修復を想定して計画的に写真撮影と実測図が作られ、それが残り、さらに江戸時代の記録も豊富にあります。城に限らず日本中で行おうとしている歴史的建造物の復元では、最も史実に忠実かつ正確に、かつての姿を再現することができると言えます。
――名古屋城以外に豊富な資料が残る歴史的建造物はないのでしょうか。
他の城郭の多くは礎石しか残っていないとか、写真も1~2カットしか残っていないとか。ほとんど資料が残っていない。資料の豊富さでは、名古屋城とは全く比較にならない。あえて言えば、鹿苑寺金閣(京都市)は焼失前に解体修理が行われていて、その時に実測図作成や写真撮影をしています。そのためかつてと同じような姿で復元されました。名古屋城天守は鹿苑寺金閣に匹敵する正確な復元ができます。
史実に忠実とバリアフリー化は「両立しない」
――木造天守にEVを設置することは難しいですか。
設置できない構造的な理由があります。
――どういうことですか。
EVは昇降の時に揺れてはい…
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