異質なジャニーズの「○○くん」呼び 社会学者が感じた世間とのズレ
ジャニーズ事務所の名称が「SMILE―UP.(スマイルアップ)」に変更された。事務所名やグループ名に関心が集まったこの間、性加害問題の他にも同族経営の弊害、圧力や忖度(そんたく)が発生するメディアとの関係など、様々な問題が指摘されている。これらの点について、社会学者で「ジャニーズの正体」の著書がある太田省一さんは「ジャニーズ事務所に限った話でなく、日本の芸能界が構造的に抱えている問題でもある」という。一方で、他の芸能事務所にない異質さとして、「若さ」至上主義を指摘する。その思想が、戦後日本の成長期から現在に至る社会の変化とどう関係してきたのか。太田さんに聞いた。
芸能界全体の問題点と、ジャニーズの特殊な点
――ジャニーズ事務所の名前がどうなるのかに高い関心が集まりました。また、事務所が設置した再発防止特別チームの調査報告書では同族経営の弊害が指摘されています。
「今回は弊害の側面が注目された形ですが、同族経営は日本の芸能界では珍しい事例ではありません。戦後に芸能事務所を近代化したパイオニアとされる『ナベプロ』こと故・渡辺晋さん創業の渡辺プロダクション、業界初の株式上場を果たした堀威夫さん創業のホリプロ。いずれも創業者の名が事務所の名前になり、現在も創業者の親族が経営に携わっています」
――調査報告書では「マスメディアの沈黙」が指摘されるなど、ジャニーズ事務所とメディアの関係も大きな問題になっています。
「『バーター』や『共演NG』といった業界用語は、メディアで大々的に報道されることはなくても知っている人が大半でしょう。人気タレント出演の見返りに自社で売り出し中の新人も合わせて起用するなどのことは、ごく普通に行われています」
「メディアへの圧力で言うと、逆説的な事例ですが、1970年代に人気を博したテレビのオーディション番組『スター誕生!』は、ナベプロがテレビの各番組に強い影響力を持ち、ナベプロ帝国とも呼ばれる状況があったことへの反発で生まれたような番組でした。素人を出演させ、そこから生まれたスターは、森昌子さんや山口百恵さんはホリプロに、桜田淳子さんはサンミュージックにと、ナベプロ以外の芸能事務所に所属して芸能界の地図が塗り替えられることになりました」
「こうした点ではジャニーズ事務所だけが特殊だったわけではなく、程度の差こそあれ、日本の芸能界そのものが抱えている問題でもあります」
――では、ジャニーズ事務所が特殊だった部分はどこにあるのでしょうか。
「一つは、『男性アイドル=ジャニーズ』の図式でジャンルを独占し、各方面に影響を及ぼしたことです。このため、問題点が他の芸能事務所以上に大きくなりました」
「そしてもう一つは、創業者の故ジャニー喜多川氏の思想が大きいと思いますが『若さ』に至上価値を置いたことです。それゆえに、1990年代以降は世間が支持するジャニーズ像と、ジャニーズ事務所が目指す理想像にズレが生じてどんどん大きくなったと思われます」
異質な文化を生んだジャニー氏の価値観
――90年代以降、ジャニーズの存在感は大きくなっていったと思いますが、ズレが大きくなるとはどういうことでしょうか。
「ジャニーズの異質さで象徴…
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