第13回天国の妻から届いたバースデーカード 返信は初めての「ラブレター」

有料記事想いをつづって

村井隼人
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 2020年1月17日、自宅のベッドに横たわった後藤千代枝さん=東京都日野市=は、ささやくように言った。

 「さようなら」

 夫の秀機さん(80)は最期の言葉だと悟った。妻を見つめて言った。

 「さようなら、幸せだったよ」

 「私もです」

 享年69歳。43年連れ添った夫婦の別れだった。

 その年の4月、秀機さんは自室の文箱の中に、緑色の見慣れない洋封筒を見つけた。

 仕事関係の無味な封筒の下に、ひっそりと隠れていた。

 表には「秀機様」、裏には「千代枝」。

 見慣れた字体は妻のものだったが、もらった記憶のない手紙に、心臓をつかまれたような感覚になった。

妻の最後の戯れ

 丁寧にのりづけされた封筒を開けると、1枚のカードが出てきた。

 『秀機様 ありがとう!今年…

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