第1回万博が置き土産から「爆弾」に変わるまで 岸田官邸の薄かった危機感
トントントントン……。いら立ちなのか、それとも高揚感の表れか。8月31日午後、大阪・関西万博の関係閣僚が集まった官邸の首相執務室に、岸田文雄首相が指で机をたたく音が響いた。
「海外パビリオンの建設が遅れています」。前日に大阪市の日本国際博覧会協会(万博協会)を視察した岡田直樹万博相は、建設事業者が決まった国は10カ国余りにとどまっていることなどに危機感を訴えた。斉藤鉄夫国土交通相は、資材や人員の確保の不安など建設業界の懸念を語った。首相は、机をたたきながら20分余りで議論を引き取った。「これからは、政府がイニシアチブ(主導権)を取って進める」
その直後、官邸の大会議室であった万博の関係者会合で首相は力を込めた。「万博の準備はまさに胸突き八丁の状況にある。私も、政府の先頭に立つ」。視線の先には、大阪府の吉村洋文知事や万博協会の十倉雅和会長らの姿があった。開幕まで600日を切った万博を成功させるには、自らが主導するしかない――。首相による不退転の決意表明だった。
大阪・関西万博が逆風にさらされています。海外パビリオンの建設遅れ、増え続ける経費、見通せぬ「レガシー」……。開幕500日前を機に、課題がひしめく万博の行く末と開催意義を考えます。
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構想から誘致、開催まで節目の出来事を振り返りつつ、新たな動きを記録していきます。[もっと見る]