なぜJAL機と海保機は同じ滑走路にいたのか 食い違う両者の主張
羽田空港の滑走路上で2日、日本航空(JAL)と海上保安庁の航空機が衝突し炎上して5人が死亡した事故で、国土交通省は3日夜、両機と航空管制官1人との交信記録を公表した。
公表された交信記録には、海保機に滑走路への進入を許可したとの内容はなかった。海保機が滑走路上にいた理由は、依然として不明なままだ。
「管制からの着陸許可を認識し、復唱した後、進入・着陸操作を実施した」。日本航空(JAL)は事故から8時間あまりたった3日未明、こう記した広報文を発表した。一方の海上保安庁機の機長は、海保によると、搬送先の病院で「滑走路への進入許可を得た上で進入した」と話したという。
滑走路への進入について、双方が管制から「許可を得た」と主張した形だった。
国土交通省は3日夜になり、JAL機、海保機と航空管制官との交信記録を公表した。
記録では、航空管制官はJAL機に着陸許可を出した後、海保機に、滑走路につながる誘導路の「停止位置まで地上走行してください」と伝えていた。これに対し、海保機は「停止位置に向かいます」と反応した。
国交省によると、事故が起きたのはこの交信の約2分後。滑走路上が現場だった。
国交省は「記録を見る限り、海保機に対して滑走路への進入許可は出ていない」とした。
事故をめぐっては、双方が互いの機体を十分認識していなかった可能性も浮上している。
JAL幹部は2日夜の会見で、調査中としながら、JAL機が海保機を「認識できていないというふうに思っている」と説明した。海保機の機長も、事故直後に羽田航空基地に連絡した際、「滑走路上で機体が爆発した」と報告したという。
そもそも、衝突の詳しい状況は明らかになっていない。事故の調査を始めた運輸安全委の藤原琢也・航空事故調査官は3日昼、取材に「機体全体がかなり激しく損傷しており、どのようにぶつかったのか、現時点では明確にはお答えできない」と述べるにとどめた。
国交省と海保によると、事故でJAL機は海保機と衝突し、出火した後に、そのまま約1千メートル進んで止まり、その場で焼け落ちた。JAL機が着陸前後にスピードが出た状態で海保機に衝突した可能性がある。
3日朝時点では、衝突現場付近とみられるC滑走路上に海保機の残骸があり、その約1キロ先の滑走路右側にはJAL機の残骸があった。
東京消防庁によると、海保機は2日午後9時35分ごろに鎮火した。JAL機の消火活動は続き、鎮火は3日午前2時15分ごろになった。
元全日空機長で航空評論家の樋口文男さんは「一つの滑走路には原則、航空機は1機しか入れない。通常はあり得ないことが起きた」と指摘する。事故原因は調査結果を待つべきだとしつつ、「何らかの意思疎通のミスが考えられ、管制、海保、JALの3者それぞれで『安全第一』が守られていたのか、検証すべきだ」と話した。
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- 【視点】
この事故の直接の原因は、航空管制官から海上保安庁機に対して滑走路への進入許可があったとは交信記録上は確認できないのに、なぜ海保機の機長は進入許可を得たと話しているのか、という点に絞り込まれたようです。 しかし、航空管制官と航空機の機長ら
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