京都府の一般会計当初予算案、9950億円 4年ぶり1兆円下回る

武井風花
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 京都府は7日、総額9950億3100万円の2024年度一般会計当初予算案を発表した。新型コロナウイルス対策の関連事業がなくなったため、総額は前年度比で3・4%減となり、4年ぶりに1兆円を下回った。子育て支援や文化施策などに力を入れるほか、災害対策を強化する方向性を示した。2月補正予算案と合わせ、14日開会の府議会に提出する。

 24年度当初予算案は、国の補正予算を踏まえた23年度2月補正予算案と合わせて編成された。2月補正分の94億4500万円と合わせると、計1兆44億7600万円になる。

 西脇隆俊知事は記者会見で、「総合計画に基づき、あたたかい京都づくりを加速化するために必要となる予算を編成した」と述べた。

 1月の能登半島地震を念頭に、防災対策に力を入れる。建物の耐震化工事の支援制度を24~25年度限定で拡充して自己負担額を軽減し、耐震化を促進する事業に3億800万円を計上。7月には危機管理センターが本格的に稼働する予定で、迅速な初動体制の確保や地域の防災力強化に向けた事業に14億1千万円を充てる。

 医療・福祉分野では、重度心身障害者の医療費負担額をゼロにする助成制度の対象に精神障害者を加える事業費として1億1300万円を計上した。

 府が力を入れる「子育て環境日本一」の実現に向けては、市町村による子育てにやさしいまちづくりの計画を府が認定して支援する独自の制度を創設(6500万円)する。私立高校に通う生徒がいる世帯への授業料支援の拡充(34億2600万円)、親も一緒に保育所などに通園し、子育ての孤立感の解消を図る府独自の制度(5100万円)なども実施する。

 文化・観光振興策は、今年開園100周年を迎える府立植物園(京都市左京区)の記念事業に2億4300万円を充てるほか、川を観光のコンテンツとして利用して「川の京都」ブランドを構築するなど、府域への観光客の周遊を促す事業に3億6900万円を計上する。

 このほか、農林水産業や、建設業、観光業、地域交通など、人手不足の業界向けの人材育成への支援(2億9100万円)、地域交通網の維持に向けた取り組みの支援(20億3600万円)なども盛り込んだ。

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 24年度当初予算案の総額は、前年度と比べて351億8900万円(3・4%)減った。新型コロナウイルスが5類に移行し、関連事業費がなくなった影響が大きく、新型コロナの関連事業費を除けば1・2%増になるという。

 歳入の3割を占めるのは府税で、前年度と同じ2840億円だった。新型コロナの自粛が明けて経済活動が再開し、企業の業績が回復した影響で、法人事業税は前年度に比べ25億8千万円(2・8%)増加した。一方、定額減税の影響で個人府民税は22億4700万円(2・8%)の減額となった。

 借金にあたる府債の発行額は627億6200万円で、前年度比で30億7900万円減った。

 24年度末の府債残高は2兆3739億円になる見通しで、前年度末の見込み額より198億円減となる。府民1人あたり94万9千円の借金を抱えていることになる。西脇知事は「財政状況が厳しいのは変わらない」として、24年度内に行財政運営に関する計画を新たに策定し、安定した財政基盤の確保に努めると述べた。

主な新規・拡充事業(2月補正予算案を含む)

●看護補助者・福祉施設職員の処遇改善(14億1900万円) 看護・介護人材の確保を図るため、今年2~5月分の収入を月額平均6千円引き上げる

●防災・減災力の強化(14億1千万円) 今年7月に本格稼働する危機管理センターを整備。常設の災害対策本部会議室を設置するなど、初動体制を整える

●住宅・建築物の耐震化支援(3億800万円) 今後の地震に対する備えとして、耐震改修の補助基本額や補助率を引き上げ、建物の耐震化を進める

特殊詐欺の対策強化(3500万円) 早期の犯人特定のため、防犯カメラ映像の分析装置を高度化し、迅速に共有するシステムを導入

●子育てにやさしいまちづくりを支援(6500万円) 市町村の子育てにやさしいまちづくりを支援するため、府が計画策定や拠点整備などを支援する制度を創設する

●私立高校の授業料補助を拡充(34億2600万円) 私立高校に通う生徒を対象にした授業料補助を拡充。中間所得層への補助額を引き上げる。他府県に通う生徒への支援もする

●日本一の留学環境の実現(3100万円) 既存の語学留学支援に加え、発展途上国でのボランティアやスポーツ留学など、1~6週間の特定の目的を持った留学の支援制度を新設。費用の一部を助成する

●「子育て―教育コンシェルジュ」の設置(500万円) 24時間365日対応可能な府立学校専用電話・相談窓口を新設するほか、元教員やスクールロイヤーで構成する専門家チームを結成し、解決を支援する

●児童生徒の「心の健康観察」を試験実施(800万円) 児童生徒が1人1台端末に日々の気持ちを入力することで、教員が心や体調の変化を早期に察知し不登校を防ぐ取り組みを一部市町村で試行する

●国指定史跡「恭仁宮」跡(木津川市)の活用整備(2200万円) 2025年度の特別史跡の実現に向けた調査を実施するほか、南部地域の振興拠点とするための整備内容を検討する

●植物園100周年記念事業(2億4300万円) 府立植物園の開園100周年を記念し、記念祭やメディアアートプロジェクトを実施する

●人手不足の業界の人材育成支援(2億9100万円) 農林水産業や建設業、観光業、地域交通など、人手不足が深刻化している業界の人材育成を支援する

●地域交通の確保(20億3600万円) 地域の鉄道などの交通網の維持を支援。交通空白地での自動運転の実証運行なども支援する

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