「地味だけど勇敢でしぶとい」哲学研究者永井玲衣さんが対話した福祉
「水中の哲学者たち」の著者で哲学研究者の永井玲衣さん(32)は、人びとときき合い、考え合う「哲学対話」を様々な場で行ってきた。その一つが、福祉職場で働く若者と障害当事者でつくる「潜福(せんぷく)」のメンバーが2022年夏にオンラインで開いたトークイベント。参加した永井さんは、福祉の現場で起きていることを言葉にし、冊子に編む「潜福」の活動について「めちゃくちゃ地味だけど、勇敢でしぶとい」と評した。
――「潜福」は、高齢者や障害者の支援に携わる若者と、支援を受ける側の障害のある当事者が、「福祉の現場に潜って見て感じたものを自由に語る」ことを掲げた冊子づくりが活動の中心です。福祉に「潜っている」と感じる彼らは、永井さんが、哲学的な対話や思考を「水中に潜る」ことにたとえたことに通じ合うものを感じています。
「紋切り型でわかりやすい言葉を越えたところにあるかすかなものを言葉にしていこう。そんな『潜福』の試みはまれだと思いました。それ自体で『泣ける』とか『笑える』といった分かりやすいものではない。でも、忘れないでおきたい静かな心の動きを言葉にしようとしている」
「それを一人ではなく、集団を組んで、そうした言葉をともに編み、1冊の本にしようとしていることにも感銘を受けました」
――私たちは福祉を語るとき、「かわいそうな人を助ける」といった美談に仕立ててしまいがちです。
「偽善とも言われがちです…