第1回どうして仕事をやめないの? 「嫁」を求めた義母と夫、疲れ果てた私

有料記事ふたりのかたち

大蔦幸
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 もう20年以上も前のことだ。

 それなのに、埼玉県に住む50代の女性は義母から言われた言葉が忘れられない。思い出すだけで、胸の辺りがひりひりする。

 下の子が小学校の低学年だったころ。年末に義父母の家に帰省した時だった。

 義母が尋ねてきた。

 「ねえ、いつまで仕事を続けるの? 子どもたちがかわいそうよ。母親が仕事をしていたら、子どもは不良になるわよ」

 なんてことを言うんだろう。驚きすぎて頭が真っ白になった。次に、のど元まで言葉が出かかった。

 「だったら、専業主婦で育てたあなたの息子さんは、そんなにできた人なのでしょうか?」

幸せになるために、人生をともに歩むと決めたはず。でも、パートナーとの毎日が思い描いたものにならない人もいます。苦しみの原因は、改善策は。たくさんの「ふたりのかたち」を通して考えます。

 もうこの家の人たちとは一緒にやっていけない。顔を見るのも嫌。同じ墓に入るのなんてもってのほか。

 積もり積もった義理実家の全てが受け入れがたく、許せなくなったのはこの時だったと思う。

「どうして私ばっかり」が口癖だった母

 結婚当初から、どうにも義父母とは、合わなかった。特に義母とは、女性が仕事を続けることへの価値観が違いすぎた。それでも、結婚した時は、こんなにも相手の「家」の存在に辟易(へきえき)するとは想像していなかった。

 義母は専業主婦だった。夫が…

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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2024年3月21日17時26分 投稿
    【視点】

    それが外からどう見えているかは別として、<ひとりとひとり>でもある<ふたり>のかたちは本当に多様だ。うまくいかない<ふたり>のうまくいかない原因もその改善策も。 離婚が“出戻り”などと言われて非難される時代ではなくなったように思うが、離婚

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    永田豊隆
    (朝日新聞記者=貧困、依存症、社会保障)
    2024年3月20日9時0分 投稿
    【視点】

    バラエティー番組でタレントが自分の妻を「嫁」と表現するのを聞くたび、何とも言えないもやもやが残ります。この記事を読むと、戦前の家制度は法律上なくなったものの、人の意識の中に根強く残っていることを感じます。 最近は減ったかもしれませんが、漫画

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