第1回セイジの演奏に刻まれた日本 盟友デュトワが語る小澤征爾さんの本質

有料記事音楽を生きた人 小澤征爾さんを悼む

聞き手 編集委員・吉田純子
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 指揮者小澤征爾さんを悼む声がやまない。その人生は、まさに「音楽を生き抜いた」としか言いようのない比類のないものだった。88年の生涯で残したものを知人や識者が語る。初回は世界的指揮者のシャルル・デュトワさん(87)が、長きにわたる盟友の音楽の本質を読み解く。

 セイジと多くの時間を過ごしたのは、音楽祭でその名を知られる米タングルウッドです。後にセイジが29年間音楽監督を務めたボストン交響楽団の拠点ですが、私が訪れるようになった1960年ごろは、名匠シャルル・ミュンシュが常任指揮者を務めていました。セイジも私もともにミュンシュに学び、大きな薫陶を受けました。

 私とセイジとの音楽的な共通項を、かつて日本で「エレガンスと透明感」と語ったことがあります。しかし、セイジと私のエレガンスは本質的に異なるものです。私は欧州に生まれたので、欧州の音楽家の伝統を自然と受け継ぐ形になりました。ミュンシュ以上に影響を受けたのは、私と同じスイス出身のエルネスト・アンセルメで、彼を通じてストラビンスキー、ディアギレフ、ラベル、バルトークといった芸術家の系譜におのずと連なることができました。いわば故郷で仕事をしているようなものです。

かつてない繊細さが世界を魅了した

 しかし、セイジは違います。彼は日本で育ち、異邦人として欧州に出会いました。

 セイジのエレガンスは、まぎ…

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