第1回家畜を得るため「父は切除を急がせた」 少女が負った傷、心にも深く

有料記事慣習のジレンマ 女性器切除(FGM)のいま

ケニア南西部ナロク=今泉奏
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 少女のまなざしは、宙をさまよっていた。

 2月下旬、ケニア南西部ナロクの小さな交番に、マサイの少女(13)が座っていた。「何があったんだい」。そう尋ねる男性警察官に、消え入りそうな声で答える。「きのう、逃げてきました」

 少女は9歳で女性器切除(Female Genital Mutilation=FGM)を受けた。マサイ社会ではクリトリスを含む女性器の一部をカミソリで傷つけたり、切り取ったりする行為が成人儀礼の一部として続いている。

世界で2億3000万人の女性たちが

 施術を受けると、結婚の準備ができたとみなされる。少女は、親族に無理やり中年男性と結婚させられそうになり、近くの保護施設「マサイ開発計画教育センター」に駆け込んだ。家は貧しく、親族は家畜などの婚資を得ようと少女の結婚を急いだという。

【連載】慣習のジレンマ 女性器切除(FGM)のいま

 女性器切除(FGM)という習慣がアフリカや中東の一部にむかしからあります。女性の人権を侵す行為として、国際的な廃絶の取り組みがある一方、伝統儀礼だとの反論もあります。ケニアから最新事情を報告します。

 FGMは、アフリカやイスラ…

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この記事を書いた人
今泉奏
ヨハネスブルク支局長|サハラ以南アフリカ担当
専門・関心分野
アフリカ、植民地主義、グローバルサウス
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    田中宝紀
    (NPO法人青少年自立援助センター)
    2024年4月30日20時53分 投稿
    【視点】

    学生時代に国際開発を学ぶ中で、FGMの問題を知りました。記事中にもある通り、習慣化する中で女性からの支持もあり、貧困により若年婚を急ぐ背景もあり、西洋的な価値観だけを持って廃絶を訴えることのジレンマは、学生同士で議論を尽くしても当然答えが出

    …続きを読む