重度自閉症で言葉を話せない僕 タブレットで入力した「夢は小説家」

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松本江里加
【動画】自閉症で言葉を話せない内田博仁さんがタブレットで文字入力する様子=母の敦子さん提供
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 「まるで頭と体をつなぐ重要なコードが切れてしまっているような感覚」の中で、生きている。

 言葉は理解できている、伝えたいことがある――のに、言葉を理解できていないと思われてきた。

 内田博仁(はくと)さん(15)は、神奈川県内の特別支援学校高等部に通う。重度の自閉症があり、言葉を話すことができない。

 幼いころは知能検査で正確な答えを指し示すことができず、重い知的障害があると思われていた。そのころのことを、博仁さんはこう表現する。

 「(車はどれ?と聞かれ)僕は車を指さすことができない。そしてああ分からないのねと判断されてしまう。車がわからないわけないじゃないか!僕は間違った判断をされたことに動揺し落胆しそして悪いことにこうなるとどんどん集中力をなくし、より体と心の制御がなくなる」

 今はこうして自身のことを表現することができるようになった。話すことはできないが、博仁さんはタブレットや電子手帳で文字を入力する。

 父・博道(ひろのり)さん(53)や母・敦子さん(52)にテキストの入力ができる画面にしてもらい、人さし指でローマ字をタップする。予測変換は使わず、一文字ずつ、丁寧に入力する。漢字への変換や入力したテキストの保存などの操作はできないため、両親が手伝う。

 言葉を話せない博仁さんの内面にいち早く気づき、導いたのは母だ。

 2歳のころから、重度の自閉症と重度の知的障害の疑いがあると言われ、療育施設に通う日々だった。相談した発達専門の相談員に「この子の未来は決まっている。大人になっても働くことはできないでしょう」と断言されていた。

 2歳半のころ、祖母の家に遊…

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この記事を書いた人
松本江里加
西部報道センター
専門・関心分野
地方創生、子どもの権利、福祉,など
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    佐藤優
    (作家・元外務省主任分析官)
    2024年5月26日21時13分 投稿
    【視点】

     内田博仁氏には、類い稀な才能があります。それは自分が考えていることの9割以上を文章に出来ることです。職業作家でも自分が考えていることをここまで正確に表現できる人はなかなかいないと思っています。私の場合、考えていることの7~8割程度しか文章

    …続きを読む
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    武田緑
    (学校DE&Iコンサルタント)
    2024年5月27日17時11分 投稿
    【視点】

    わかっているのにわからないとされてしまうことの悔しさを想像しながら読みました。状況はもちろん違いますが、重松清さんの自伝的である小説「きよしこ」では、吃音ゆえに自分の思いを表現できず相手に伝わらないという苦しい経験が、物語として読者が追体験

    …続きを読む