第1回言えなかった「ふざけるな」 ある会社の破綻、国産スマホ縮小の陰で

有料記事シン・ガラパゴス

田中奏子

シン・ガラパゴス ①

スマートフォンは、私たちにこれほど身近な製品でありながら、もはや生産する国内メーカーは一握りになった。かつて、独自の進化をとげた「ガラケー」の世界は、どんな変化をたどり、この先、どこへ向かうのか。

[PR]

 JR新横浜駅近くのビルの一室には、段ボール箱が積み重なっていた。数カ月前までは二十数人の社員がいたはずだが、今はその姿はない。寒々しい空間がそこにあった。

 「小所帯になるから、今週末には小さいところに移るんだ」

 昨年11月半ば、大沢金満(87)は会社の引っ越しに追われていた。

 その3カ月前。暑い夏の盛りだった。大沢の会社「ピーク・ジャパン」は、経営破綻(はたん)した。スマートフォンに使われる電子部品を輸入販売していた会社だった。

 経営状況が急転したのはさらに3カ月前、昨春のことだ。

 大口の取引先だった旧富士通グループのスマートフォンメーカー「FCNT」が事業を停止したのだ。昨年5月30日、FCNTは東京地裁民事再生法の適用を申請した。

 そのあおりを食った。いわゆる連鎖破綻だ。

 FCNTは「らくらくスマー…

この記事は有料記事です。残り1618文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

  • commentatorHeader
    マライ・メントライン
    (よろず物書き業・翻訳家)
    2024年6月24日11時0分 投稿
    【視点】

    日本社会の現状を踏まえてこの経験談を読むと、「もし、なにかしら権力筋にコネがあれば生き残れたのかも」という印象がある。しかし大沢氏の口からそのような言葉は出てこない。それは彼が「まっとうな商売人」だからだと思う。 正直、彼の商売が負のスパイ

    …続きを読む
  • commentatorHeader
    松谷創一郎
    (ジャーナリスト)
    2024年6月24日19時33分 投稿
    【視点】

    この記事にある「国内の携帯電話メーカーの変遷」の図は、とても興味深いものです。ソニー以外はすべて撤退か外資の買収なのですね。 スマートフォンは、おそらくこの20年くらいではもっとも大きなイノベーションだったように思います。写メやiモードな

    …続きを読む