「石の上にも三年」は今③
昨今、若者の働き方について退職や転職にまつわるサービスの活況が話題になることがあります。一方で、国の調査では大学新卒者の3年以内離職率に大きな変化は見られません。「辞める若者たち」の実際は? 自身も新卒で入った会社を4年余で辞め、その後立ち上げたベンチャーでいま、平均年齢27歳の社員たちと仕事をする経営者・若井映亮さん(35)に聞きました。
どんな仕事も3年続ければ道が開け、成功にもつながる――。日本で長く流布してきた「石の上にも三年」、社会や働き方が変わる中でどう考えてゆけばいいのでしょうか。インタビューシリーズでお届けします。
――新卒で入社したサイバーエージェントに4年半在籍後、起業されました。キャリアはどう計画されていたのでしょうか。
元々起業志向があり、就職活動の面接でもその思いは伝えていました。学生時代はDJとして活動していて、ナイトクラブなどを含めたナイトタイムエコノミー(夜間の経済活動)を盛り上げたいと考えていました。当時はクラブの「ダンス規制」による取り締まりが強化されるなど、必ずしもイメージがいいとは言えなかった。企業に所属してビジネスモデルを作ったり、広告で啓蒙(けいもう)したりすることができるのではないかと考えていました。
そして、新規事業の責任者育成に積極的だったサイバーエージェントから内定をもらいました。
――起業を見据えて始まった、大手でのファーストキャリアはどう進みましたか。
実は、実績やスキル不足で、新規事業の責任者としては活躍できませんでした。一方で、営業としての評価が高まっていきました。自分がなりたい像には近づけなさそうだけど、違う道で評価され、給与もかなり上がり……という状況に、「このままいると抜け出せなくなる」と感じました。そんな状況と前後して、学生時代に熱中したDJが活躍できる社会に変化してきたと感じ、辞めることを決めました。同期入社の中にも、すでに起業したり転職したりした人たちも一定数いる環境でした。
「もっとチャレンジしておけば」…でも後悔はない
――4年半での退社に後悔はないですか。
恩返しがしきれないまま辞めた申し訳なさはもちろんありますが、「4年半では足りなかった」という後悔はありません。様々な経験ができたので。ただ、「もっとチャレンジしておけばよかった」という後悔はあります。そういう「暴れ回ってくれる人」を評価したい会社だったのではないかと、いまになって思います。それに、営業として評価されていたのであれば、そこで一生懸命やって結果が出たら、自分のやりたい新規事業をやらせてもらえたのかもしれない。でも、当時はそこまで見えていませんでした。
――退社後は。
起業の道を選択しました。音楽業界に貢献することを目的に、裏方に回りクリエーターやアーティストの方々を支援する方向で動き始めました。
起業後、音楽とITをキーワードに世界中のサービスを調べていたタイミングで、ショート動画投稿のプラットフォームとしてTikTokが日本ではやり始めました。「音楽に何か貢献したい」という自分の軸が運良くTikTokの流行にハマり、クリエーターの動画制作をバックアップするなどの事業が軌道に乗りました。
――「石の上にも三年」、なんて言葉もありますが、ネットを主戦場とする業界は、変化が激しく、人材の出入りも活発な業界のようにも思います。どんな方が働いているのでしょうか。
むしろ我々の会社は3年で辞めちゃうような人、どんどん新たな挑戦をしたい人が入ってくる会社だと思います。
およそ160人いる社員の平…
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