ベーシックインカムを実現するのはIT業界の責任か

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David Streitfeld/The New York Times 抄訳=藤崎麻里/朝日新聞GLOBE編集部
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Is It Silicon Valley’s Job to Make Guaranteed Income a Reality?

 IT業界はここ数年、切実に困っている人々に無条件で月額500ドルや1000ドルを払う取り組みを試験的におこなってきた。実験的ともいえるこうした取り組みは、寝室一つだけのアパートメントの家賃が月3000ドルと高く、ささやかな持ち家に至っては手の届かないぜいたくであることが多い、シリコンバレーの中心部で行われた。

 こうした取り組みをシリコンバレーが支援したことが、「所得保障[guaranteed income]」の考え方を中心的な議題に押し上げてきた。所得保障は、条件付きあるいは無条件の現金給付、そして最もユートピア的な形では「ユニバーサル・ベーシックインカム[universal basic income](あらゆる人への所得保障)」とも呼ばれる。こうしたプログラムが有効なことはデータで示されているようだが、所得保障を進めようとする運動に対して超党派の政治的なコンセンサスは崩れつつある。

 最近では、テキサス州の司法長官がヒューストンのベーシックインカム(最低所得保障)制度に公的資金が使われるのを阻止するために法廷に立った。また、アイオワ、アイダホ、サウスダコタの各州の共和党員らは、同様のプログラムを禁止した。アリゾナ州では、知事が拒否権を発動したが。

 一方で、所得保障をめざす運動は、いくつか勝利も収めている。オレゴン州では今秋、州全体のベーシックインカム制度に関する提案が投票にかけられそうだ。この措置は、州に住む人に1人当たり年間750ドルを支給するものだ。財源には、2500万ドル以上収益がある企業にかける3%の税金を充当する。

 所得保障は、オープンAI社のCEO(最高経営責任者)サム・アルトマン氏、テスラのCEOイーロン・マスク氏、ツイッターの共同設立者ジャック・ドーシー氏、セールスフォースのCEOマーク・ベニオフ氏らが主張してきたものだが、いま正念場を迎えている。

所得保障を支持する立場の人たちからは、「研究の時間はもう終わった」と実現をせかす言葉も聞かれたそうです。では、誰が責任をもって進めるべきなのか。政府か、企業か、富裕層か。

 7月22日には、これまでで…

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