「あと5分しか…」面会禁止の病院からの電話 一人で逝った父の無念
鈴木智草さんの父親(享年84歳)は、家族の誰にもみとられず、東京都内の病室で息を引き取った。今年2月3日のことだ。
鈴木さんは仕事の関係でアメリカに住んでいる。母や姉から「もう長くない」と連絡を受け、2月3日午後に緊急帰国した。そのまま空港から病院へ直行するつもりだったが、面会は認められなかった。
なぜなのか。
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父親に異変が起きたのは、数年前のことだった。認知症のような症状が出始め、外出先で転ぶことも増えた。大学病院で検査を受け、昨年1月、「進行性核上性まひ」と診断された。脳のさまざまな部分の神経細胞が減り、運動機能に支障が出る難病だ。いずれ寝たきりになると説明されたが、症状の進行はゆっくりだと言われ、家族は見守っていた。
昨年8月、父親は通っていたデイケアでいすから落ち、脊椎(せきつい)を圧迫骨折した。救急車で都内のA病院に運ばれ、そのまま入院した。
A病院は500床弱の中規模病院で、都の二次救急医療機関にも指定されている。面会は予約制で、週1回、1回につき15分という規則だった。母親によると、毎回、スタッフが車いすに乗せた父親を病棟の一室に連れてきて、15分経つと「時間です」と病室に連れ帰るという。
鈴木さんは仕事を調整し、10月に9日間だけ帰国した。病院の規則から言えば、その間に最大2回、計30分しか父親に会えない。
「娘がわざわざアメリカから帰国するので、余分の面会を認めていただけないでしょうか」
母親が事前に病院と交渉したが、認められなかった。
父親はその病院に約3カ月間入院し、リハビリを続けた。だが歩行機能は戻らず、退院と同時に有料老人ホームに入居した。
この老人ホームはいつでも面会することが可能で、家族もホッとしていた。
だが穏やかな時間は、長くは続かなかった。
近づく父の死期 面会禁止「例外は認められない」
入院中に病気が進行した父親…