それぞれの最終楽章 また会う日まで!(2)
朝日新聞編集委員 中村俊介
「おいしいの食べて生きる喜び」。妻がふざけて書いた紙切れを眺めるたび、好物を前に喜ぶ顔を思い出す。
昨年9月、近所のクリニックで胃がんがわかり、翌月、福岡市内の二つの大学病院で診断を受けた。いずれの所見も「新年を迎えられるかどうか」だった。あと3カ月……黙り込む僕を尻目に、妻はネットから得た知識でまくし立てている。医者もうんざりして、だったら来るなと言いたげで、僕はハラハラした。
現実を直視できない僕と対照的に、妻はどんどん自分で答えを出していくタイプ。あれこれ調べないではいられないたちで、言い出したら聞かないかたくなさや思い込みもあった。病が発覚して、それはますます強くなっていった気がする。
そういえば後日、「奥さんは…
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