第13回闘争心むき出しの幼少期 打者大谷翔平のために選別された特別な球
安藤仙一朗
今季、大リーグ・ドジャースの大谷翔平が打席に入ると、使っている球を球審が交換する光景が繰り返された。
新しく投手に渡される球には、「特別な意味」を持つ数字などが刻印されていた。
この30歳が成し遂げた偉業を証明するための1球。その記念球を手にするために客席では争奪戦が起き、オークションにかけられては日本円にして数億の値段がつく。所有権を巡って裁判沙汰にも発展する世紀のお宝だ。
小さい頃も同じだった。打者大谷に投げられるボールは選ばれたものばかり。ただ、超一流メジャーリーガーとなった今とはかけ離れた事情で――。
「翔平にいいボールは、使えなかったですね」
岩手県奥州市の少年野球チーム・水沢リトルで現在監督を務める佐々木一夫さん(60)=当時コーチ=は、そう言って苦笑いする。
大谷が小学2年から中学1年まで所属していた硬式野球クラブは、当時もいまも変わらず、河川敷のグラウンドが練習場だ。
外野はネットで囲まれていて…