異例のスピード解散を経て始まった衆院選も終盤。一票を投じる10月27日に向け、いま、大事にしたいことは何か、さまざまな社会課題と向き合う立場から考えます。
ホームレスのおっちゃんや「グリ下」に吸い寄せられる若者たちが困窮してSOSが届く。「生きる意欲がわかない」と吐露する彼らの再出発に伴走する認定NPO法人「Homedoor」理事長の川口加奈さんに、この選挙や政治についての思いを聞いた。
10・27を話そう⑦ホームレス状態の人を支援する川口加奈さん
――政治に期待は?
投票は毎回必ずします。でも期待しすぎない。ある意味で低空飛行というか。今回も同じで、淡々と諦めずに向き合う、というのが私のスタンスです。
私は大阪で生まれ育ち、14歳でホームレス問題に出合い、ホームレスのおっちゃんたちに仕事を作り、自尊心を再び持って生き生きと生活できるお手伝いがしたいと考えました。ホームレスの人たちの7割ほどが自転車修理を得意としていました。そこで当初は放置自転車を修理して、シェアサイクルとして利用してもらう「HUBchari(ハブチャリ)」事業を起こしました。年間1.5億円規模に成長しました。
ホームレスの人が泊まれる短期シェルター、就労支援を受けながら長期滞在できる施設も作りました。利用者は、高齢男性だけでなく、母子、父子、若者にも広がっています。事業収益は大きな方ですが、多くが個人の寄付により支えられています。
若者の相談増、生への諦めも
活用できる制度は使いますが、なければ現実的に対応して、できる範囲でコツコツと取り組んできました。
――相談傾向は?
年々増加しています。とりわけ若年層の増加は深刻です。昨年度は新規が948人(平均年齢42.2歳)。10~30代が半数を占め、20代が一番のボリュームゾーンです。
家庭環境を調べると、約9割が18歳未満までに、虐待や親の死別、離婚による生活苦などの社会的不利を経験していました。成人後も非正規雇用を転々として困窮状態に陥っていることも判明。精神疾患を抱えている人も多い。
児童福祉法の対象の年齢を超えて、法支援から抜け落ちやすいのが、10代、20代のケアリーバー(社会的養護経験者)の若者たちです。仕事、住まい、貯金がない悪循環に陥り、「死にきれず来ました」と来所される人が多い。彼らは生に執着を持てないでいる。政治に関心が持てず、一票を投じる余裕もない。住民票がない人もいます。
若者が生きることにも諦めモードになってしまっていると、国から活力が失われてしまいますよね。
シェルターでは滞在しながら、次の家探しをしたり、生活保護などの必要な支援や就労につなげていく支援をしたりしています。
民間シェルターが必要な背景として、ホームレス状態からでは生活保護を申請できないことがあげられます。本来は現在地保護の原則から、住所不定であっても申請は可能です。しかし、大阪市をはじめ、いくつかの自治体では、施設に入らないと申請を受け付けてくれない特殊な運用です。
その施設は大部屋で共同生活のため、環境になじめない人も多く、生活保護の申請を諦めてしまう方もいます。そのため、まず生活保護を受給して、必要な場合は通院治療を行い、働ける状況になったら落ち着いて仕事を探すという道が閉ざされてしまう現状があります。
淡々とマイナーチェンジ
そこで、私たちのシェルターが必要とされているわけです。行政の職員からこっそり私用電話で「何とか助けてあげて」と連絡が入るケースも珍しくありません。
この20年ほど、子どもの貧困問題や経済や教育格差の是正などが繰り返し議論され、施策としても取り組まれてきた。そして今の状況です。改めて、深刻さをかみしめます。ただ絶望していても仕方ない。
――どこに問題を感じますか?
若者の困窮者支援は、ネット…