国家が語る「歴史」の意味と危うさ 保守論客二人の間で分かれた意見

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デモクラシーと戦争⑧ 歴史を「物語」で語れるか

 過去の何を物語るか。それは、何を物語らないかということでもある。同じ過去を見ていても、立場や思想によって全く異なる物語になることもある。過去は、価値を巡る対立を生む。この対立が国家レベルで生じると、「記憶の紛争」が生まれる。

 「冷戦が終わり、国家の存在感がだんだんと失われつつあるなかで、国民は何を信じればいいか分からなくなっている」。歴史学者の藤原辰史・京都大准教授はそう話す。その状態で分かりやすく、心を震わす過去が語られると、物語は劇薬となるという。

 「昔は豊かだった」「私たちこそが犠牲者」。物語は連帯を生む。国民意識が復活する。その結果、国家というよりどころが再び現れると藤原さんは考える。

 せっかく手に入れた物語だ。自分たちのアイデンティティーを揺さぶる物語には敵意を向ける。「粗暴な言説でも、この国に生まれて良かったと思わせる物語は、本当に苦しむ人の生を救ってしまう」。記憶の争いは、信仰の争いとなる。

     ◇

 2021年、ロシアのプーチン大統領がある論文を発表した。「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性」という名で、両者が一つの民族だったと主張した。翌年、ロシアはウクライナへ全面侵攻した。池田嘉郎・東京大教授(ロシア近現代史)は「今回の戦争はプーチン氏の歴史観が前面に出たものだろう」と話す。

100年をたどる旅―未来のための近現代史

 世界と日本の100年を振り返り、私たちの未来を考えるシリーズ「100年をたどる旅―未来のための近現代史」。今回の「デモクラシーと戦争」編第8回では、前回(第7回)に続き、「歴史」と「物語」の関係を考えます。

国営メディアがこぞって伝えた物語

 ロシアでは100以上の民族…

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この記事を書いた人
田島知樹
文化部|文化庁担当
専門・関心分野
文化政策、国際政治、特に欧米の外交史
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    平尾剛
    (スポーツ教育学者・元ラグビー日本代表)
    2024年12月31日12時0分 投稿
    【視点】

    物語は、連帯を生むと同時に分断をも作り出す「劇薬」になる。この藤原辰史氏の指摘に深く得心する。 フェイクニュースが飛び交い、経済的な余裕がなくなり、これまでの常識が揺らぐなかで、いまの社会には漠然とした不安を抱える人が増えているように思う

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    遠藤乾
    (東京大学大学院法学政治学研究科教授)
    2024年12月31日23時51分 投稿
    【視点】

     内省的な記事。連載のうちこの二回ほどは、歴史の語られ方に焦点を合わせている。  夏にも戦間期など歴史に学ぶ連載があり、このシリーズのほとんども、歴史にどんな教訓を見出すかという視点から、具体的にナチスとか軍部とか財務省とかを取り上げている

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