第3回四半世紀で9分短縮、新幹線の隆盛の裏で 「地域を残す」ことの意味

有料記事考 四半世紀を前に

大平要
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 ここ数年、浜松市名古屋市を拠点にしているため、東海道新幹線に乗る機会が増えた。

 東京方面に向かうとき、できればE席に座りたい。天気が良ければ、富士山を眺められる。もっとも、コロナ禍が一段落して混雑が戻った最近は、希望どおりにならないことも多いけれど。

 21世紀が始まった2001年、東京―新大阪は最速で2時間30分かかった。それから新幹線の品川駅が開業し、新型車両もたびたび投入された。

 今、東京―新大阪は最速2時間21分で結ばれている。9分の短縮だ。車内販売はなくなったが、無料のWi-Fiが使えるようになり、トイレには温水洗浄便座もつき始めた。揺れや走行音が抑えられ、会話がしやすくなった。

 東北、北海道、九州、北陸。この25年でみても、新幹線はずいぶん延びた。開業すると、観光が盛り上がる。「次は我がまちへ」の声は鳴りやまない。

 財政の厳しさから鉄道全体への予算が減る中でも、新幹線の建設のための予算は確保された。国土交通省鉄道局の元幹部は、「政治家の関心を考えると、新幹線のことに多くのエネルギーを割かざるを得なかった」。

 しわ寄せは、「地域の足」にも向かう。

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 1年前の能登半島地震で大きな被害を受けた石川県輪島市には、鉄道駅の名残がある。のと鉄道七尾線の終着駅だったが、01年の廃線とともに役割を終えた。

 今は「ふらっと訪夢」という愛称の「道の駅」に。金沢駅とを結ぶバスの発着場所にもなっている。

 「金沢までは急行でも2時間40分かかっていたし、バスの方が便利かもしれない。でも、まちの中心がなくなるという意味ではマイナス面も大きかった」。酒店「酒のたかた」を長く営む高田雅文さん(64)は、まちの衰退を嘆く。

 約100キロ離れた県都の金沢市には15年に北陸新幹線が通ったが、「輪島には恩恵は少ない」と映る。輪島市の人口は、23年までの10年で2割減り、地震後はさらに流出が加速している。

    ◇

 民間の有識者でつくる「人口戦略会議」は24年春、全国の4割が「消滅可能性自治体」だとの分析結果を公表した。20年から50年までに、20~39歳の女性の人口が5割以上減る見通しの自治体が該当するという。

 輪島市もその一つだ…

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この記事を書いた人
大平要
経済部|名古屋駐在
専門・関心分野
企業経営、働き方、地方創生、産業政策
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    小松理虔
    (地域活動家)
    2024年12月30日15時0分 投稿
    【視点】

    自分も取材を受けたひとりです。抽象的で観念的な話で怒られそうですが、ただでさえ力が衰え、疲れ果てているのに、そこでさらなる競争を強いても、お互いがさらに疲れてしまうだけでネットーワークは生まれない。競争ではなく「共創」だというのは長く掲げら

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