実際の人生でもスクリーンでも、特にこれといったこともないような場面や、何気(なにげ)ないひとことが印象深く胸に残り続けることがある。小津安二郎の「麦秋」の会話もその一つだ。
「面白いですね、チボー家の人々」
「どこまでお読みになって」
「まだ四巻目の半分です」
「そう」――
朝の北鎌倉駅…
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