2023年8月28日(月) 長野県松本市 槍ヶ岳(標高3180m) テント泊単独行 長らく立案したまま実行する機会がなかった北アルプスの表銀座縦走計画ですが、ようやく実行する機会が訪れました。天気予報で、8月最終週はほぼ安定した晴天予報がでており、このチャンスに行くしかないと思い、急遽準備をして出発しました。
計画の段階では、中房温泉からの入山や新穂高温泉からの入山なども検討したのですが、もっとも標高の高い槍ヶ岳を最後に残すというのは、体力的に厳しいと判断し、槍ヶ岳は最初に登る計画としました。では、どこから入山するかですが、槍ヶ岳に登るルートとしては、上高地から槍沢を辿るルートと、新穂高温泉から槍平を経由するルートの2つが主なルートとなります。
歩行距離が短い新穂高温泉からのルートの方が楽ですが、中房温泉に下山してから新穂高温泉まで戻ってくるのが乗り継ぎが多く待ち時間も多くて約6時間もかかってしまうこと。車を穂高駅前駐車場に停めた場合は、穂高駅から新穂高温泉まで行くのに時間がかかり、歩きはじめるのが10時過ぎになるといったことがあり、最終的に車は穂高駅前駐車場に停めておいて、朝一番で上高地に移動するというプランとなりました。しかし、現実問題として上高地入山でもせいぜい30分程度早くなるだけで、歩く距離が短く2時間ほど短縮できる新穂高温泉から入山したほうが体力的には楽だったと思います。それをあえて上高地入山にした理由は、新穂高から槍ヶ岳へ登るルートは一度歩いたことがあるのに対して、槍沢経由のルートはまだ歩いたことが無かったという単純な理由です。
ちなみに、ヤマケイオンラインで作った縦走計画によると、総距離は約37.3㎞となっていますが、グーグルマップで距離測定してみると、上高地から中房温泉まで約34kmでした。これに上下の高低差合計約6.6㎞を加えると、約40.6㎞となるので、誤差を考えると37.3㎞というのはほぼ実際の距離として計算されているようです。
装備リスト
●アッパー
ドライレイヤ: ミレー ドライナミックメッシュノースリーブクルー
ベースレイヤ: アディダス 化繊Tシャツ
ミドルレイヤ: マムート デイトリッパーフリースジャケット
ソフトシェル: なし
ハードシェル: マムート エアロスピードジャケット
インサレーション: バーグハウス ラムチェハイパーダウンジャケット
グローブ: おたふく PU合成皮革手袋K-12
アームカバー: AutoGo アームカバー
キャップ/ハット: マムート アドベンチャーベンチレーションハット
●ボトムス
ドライレイヤ: なし
ベースレイヤ: なし
ミドルレイヤ: マムート ランボールドパンツ
ハードシェル: マムート マサオライトHSパンツ
インサレーション: なし
ソックス: ファイントラック メリノスピンソックスEXPレギュラー
シューズ: スポルティバ トランゴアルプGTX
ゲイター: なし
●ギア
バックパック: マムート クレオンクレスト65+L
ストック: レキ マイクロバリオタイタニウム
テント: アライテント Xライズ2
寝袋: イスカ エア150X
マットレス: サーマレスト プロライト120
ヘルメット: グラビティリサーチ アルパインヘルメット
久しぶりのテント泊縦走ということで、準備にはしっかりと時間をかけたつもりでしたが、いくつかミスをしました。まずは、ボトムスのインサレーション、つまりダウンパンツを入れ忘れたことです。3000m前後の稜線でのテント泊なので、朝晩の冷え込みは平地の冬と同じぐらい寒いということをすっかり忘れていました。なので、夜中から朝にかけて寒さで眠れず、いろいろと手持ちのものを使ってなんとかしのいだという感じです。
それと関連しますが、寝袋とダウンジャケットも保温力不足だったので、選択を間違えたと言えます。イスカ エア150Xは最低使用温度8度となっていますが、快適に寝られるのはせいぜい12度ぐらいといった感じなので、夏の終わりの3000m級のテント場では、10度を下回ることも珍しくなく、そうであればそれなりの保温力を持ったダウンジャケットやダウンパンツを組み合わせなければ快適に寝ることができません。保温性能に劣るシングルウォールのテントを選んだのであれば、なおのことです。今回はダウンパンツを忘れてしまった上に、ダウンジャケットはかなり薄手のバーグハウス ラムチェハイパーダウンジャケットを選択してしまったので、寝袋もダウンジャケットもまったくの力不足でした。
日中の行動時における服装に関しては、特にこれといって気になるようなことは無く、暑くて大汗をかいたり、寒くて着込んだりということはありませんでした。ミドルレイヤのフリースは夜間の保温着なので、日中の行動時は着用していません。
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8月27日の朝7時過ぎに自宅を出発し、塩尻ICを降りたのが15時を回ったころでした。目的地はJR穂高駅なのに、なぜ塩尻ICで降りたのかというと、お風呂に入るためです。穂高駅の近くには日帰り温泉がなく、車で10分ほどのところに「しゃくなげの湯」がありますが、土日祝日は100円割高の700円となるので、440円で入浴できる塩尻の銭湯「桑の湯」に立ち寄ることにしたわけです。
「桑の湯」は、なかなかレトロで味のある銭湯でした。
銭湯から北へ20mほどのところに駐車場もあり、到着したときは幸運にも1台だけ空きがあり、すぐに車を停めることができました。これもあらかじめ調べていたからわざわざ立ち寄った理由です。駐車場がなければさすがに立ち寄れませんし、コインパーキングなどを使わないといけないのであれば、価格的なメリットがなくなってしまいます。
たっぷり1時間銭湯を楽しんだ後、一般道で穂高駅方面に向かいました。途中のコンビニで早めの夕食として弁当を食べ、やるべきことはやり終えてあとは寝るだけです。当初は穂高駅前の登山者用駐車場で車中泊をするつもりでしたが、途中でそれは都合が悪いことに気が付きました。登山者用駐車場にはトイレがないのです。さすがにそれではまずいので、少し手前にあった道の駅 北アルプス安曇野ほりがねの里で一晩過ごすことにしました。
8月28日は朝5時過ぎに起き、すぐに穂高駅前駐車場へ移動。準備を整えてJR穂高駅に6時40分頃に到着。7:02発の松本行に乗ったのですが、これが通勤通学のラッシュ状態で、大きなバックパックは足元に置いてはいるものの、ちょっと気まずい状態でした。ラッシュアワーの電車に乗るのはかれこれ30年ぶりぐらいです。東京でのサラリーマン時代を久しぶりに思い出しました。
7:30に松本駅6番ホームに到着し、人ごみにもまれながら階段を上がって一度改札を出て、松本電鉄の新島々行の切符を買って改札を入ると、なんと電車はさっきついた6番ホームの向かい側の7番で、同じホームでした。だったら人混みがなくなるのを待って、ホームのベンチにバックパックを置いて切符だけ買いに行けばよかったのにと悔しがるも後の祭りです。
8:02発の松本電鉄新島々行は比較的空いていたので、今度はしっかりと座って行くことができました。平日早朝の電車ですが、観光客らしい人がそれなりに乗車していて、混雑はしていないものの、椅子の方はほぼ満席状態でした。
8:32に新島々に着いて、すぐにバスの切符を買ってバスに乗り込むと、なんとほぼ満席です。荷物は持ち込んでも預けて荷室に入れてもいいとのことでしたが、持ち込む場合は膝上で抱えてくれとのことでした。20kgのバックパックを1時間も膝の上で抱えるのはごめんこうむりたいので、荷室に預けて乗り込むと、一番後ろの席が空いていたので、窓側をキープ。結局、補助席まで使う満員乗車状態となって出発。
平日月曜日の朝でこれかよと思いながらバスに揺られて、9:45に上高地に着きました。
上高地バスターミナルで、トイレに行ったり、水を汲んだり、朝食を食べたりとなんだかんだとしていたら、いつの間にか10:30になっていて、あわてて出発しました。
河童橋はやっぱり混雑していました。ほとんどは観光客なので、マジ装備の登山者は、なんだか場違いな感じです。なので、立ち止まらずにそそくさと通過しました。
小梨平キャンプ場の中を抜けていきます。一度、最終バスに間に合わずにここで宿泊したことがありましたが、平坦で日陰もあり、お風呂も売店もあってかなり快適なキャンプ場です。ここを拠点に周辺の山へ日帰りで登るというのもいいかもしれません。
小梨平にクマが出たというニュースがありましたが、注意喚起の看板がしっかりと設置されていました。
11:22 明神に着きました。上高地からは、1時間ごとに明神、徳澤、横尾と続くので、休憩にちょうどいい間隔です。ここは明神池と穂高神社奥宮があるので、観光客がたくさんいます。この先へ行くと、観光客はほぼいなくなるはずです。
12:15 明神を出てしばらくは森の中を歩きましたが、川沿いに出たところで左手に明神岳が見えました。もう徳澤に近い場所です。
上流を見ると、山がせり出して川幅が狭くなっているあたりが徳澤だったと思います。
12:22 かつて牧場だった徳澤のキャンプ場が見えました。冬期に蝶ヶ岳に登った時にここをベースキャンプにしましたが、緑の時期にテント泊するのも気持ちよさそうな感じです。
12:24 徳澤園に到着です。
建物のすぐ前に炊事棟があったので、水の補給をしました。この日は、1時間ごとに水が補給できる場所があるので、水は0.5Lのペットボトルだけで歩きました。中に入ると、飲用の水場と手洗い用の水場とに分けられていました。
炊事棟前の丸太のベンチに荷物を下ろして、休憩を兼ねてランチタイムをとることにしました。
ランチは梅おにぎり2個で簡単に済ませました。
13:43 徳澤からおおむね1時間で、横尾に着きました。ここでも休憩をとり、水を補給しておきました。この先は槍沢ロッジまで1時間半ほどかかりますが、すっかり日も陰って暑くないので、水は0.5Lだけで行くことにしました。
これまでは、この橋を越えて涸沢方面にばかり行っていましたが、今回初めて槍沢方面に進みます。
休憩を終えて槍沢方面に歩き出すと、”これより先は「登山エリア」です”と書かれた看板がありました。そういえば、明神を出てから横尾までの区間でも、ハイキング客らしい軽装の人とたくさんすれ違いました。昔は、明神を過ぎると、めったに登山者以外の人は見かけなかったという記憶がありますが、最近は横尾までは観光がてらのハイキング客が普通に入ってくるようです。なので、登山エリアの線引きは、明神ではなく横尾という認識なのでしょう。しかし、横尾まで来ても見るものは特にないので、何を目的にハイキングに来るのか良くわかりません。
すぐ先で、槍ヶ岳方面と蝶ヶ岳方面の道が分岐しています。もちろん、左の槍ヶ岳方面に進みます。
5分ほどで、川沿いの広い道が森の中へと入って行く場所があり、いよいよ登山道になったなと実感します。
狭く、それなりに勾配のある道を上っていきますが、このあたりはまだまだ槍沢沿いの比較的なだらかな道なので、案外楽でした。
苔むした岩の間を清流が流れ落ちる小さな沢を渡りました。ひんやりとした風が上流から吹き下ろして来て、ひとときの涼感に包まれました。しかし、この辺りから道の両側の笹の葉が濡れているのがちょっと気になってきました。明らかに雨が降ったということです。一時的に降ってすでに止んでしまったのならいいのですが、これからまた降り始めると面倒です。
14:57 そんなことを考えながら歩いていると、心配していた通り雨がパラパラと落ちてきました。しばらくは様子を見ながら歩いていましたが、けっこう本格的に降り始めたので、木の下で雨を少し防ぐことができる場所を見つけて、レインウェアを着ることにしました。まずは、バックパックにレインカバーを装着しました。
続いて、レインウェアの上下を着て、サコッシュにもレインカバーを装着しておきます。
槍沢沿いの道は、比較的整備がきっちりとされている感じの場所が多く、石の階段や石畳が作られていてわりと歩きやすい感じでした。もっとも、雨で濡れてしまうとスリップに気を付けながら慎重に歩く必要があるので、それはそれで神経を使いました。
15:20 一ノ俣に着きました。せっかく着こんだレインウェアですが、歩きはじめて10分もしないうちに雨はやんでしまい、暑くなってきたのでここで脱ぐことにしました。ところが、一ノ俣を出発してすぐにまた雨がパラパラと降ってきて「いい加減にしろ!」と誰に言うでもなく怒ったりしたおかげか、すぐに雨は止んでくれたのでそのまま歩き続けることができました。
突然目の前に鉄骨で作られた立派な橋が現れ、ちょっとびっくりです。こんな山奥でこんなに立派な橋があるとは思いませんでした。
15:38 橋を渡りきると、そこが二ノ俣でした。ここにもベンチがあって休憩するのにいい場所です。
二ノ俣から少し歩くと、槍沢沿いの道になりました。冷たい渓流の水に触れた雨上がりの湿度の高い空気が冷やされて霧が発生し、そこにちょうど西日が射しこんできて、なんだか神々しいような美しい風景に出合うことができました。
16:14 道の傾斜が次第にきつくなってきたころ、もうすぐ槍沢ロッジの看板がありました。もうすぐと言われると、ほんの1~2分ぐらいの距離を勝手に想像してしまうのですが、それほど甘くはありませんでした。
しかも、道の勾配はますますきつくなり、いままで全然汗もかかずに歩いてこれたのに、ここにきて一気に汗が噴き出しました。
16:21 もうすぐと書いてあったのに、全然着かないじゃないかよと悪態をつきながらきつい勾配の道を登り続けて、ようやく槍沢ロッジにたどり着きました。上高地を出てからすでに約6時間が経過していて、初日ということもあってけっこう体力を消耗していました。しかし、今日のゴールは、ここからまだ30分先にあるババ平です。
キャンプ場の受付をするために小屋に入ってみると、なんと受付は現地で行うとのこと。おそらく17時で終わりになりそうなので、けっこう急ぐ必要があります。
休憩もとらずに、すぐにババ平に向けて出発です。
ところが、ここから先の道がさらに勾配がきつくなり、体力は削られるし汗はかくしで、大変でした。
ようやく道が平坦になり、そろそろババ平に着くかと思いながら歩いて行くものの、なかなかそれらしい雰囲気になりません。
17:01 いいかげんヘロヘロになって歩くのも嫌になりかけた頃、ようやくババ平に着きました。すぐに小屋に向かったものの、無情にも17時で終了との札がかかっていて、受付の窓も閉められていました。ただ、小屋の中に人の気配があったので、窓ガラスをノックすると女性がカーテンを開いて窓を開けてくれたので、テント泊の受付をしてもらうことができました。考えてみれば、受付が締め切られていたのなら、そのままテント泊して朝出発してしまえば、2000円払わなくて済んだわけで、何も無理して急ぐ必要はなかったのかもしれません。
ババ平はそれほど広くて平坦なキャンプ場ではなく、小屋前の平坦な場所にはそれなりにテントが張られていて、場所はないわけではないものの、わざわざ混雑する場所にテントを張る気にはなれず、槍沢の方へ降りてみたら、整地されたいい場所があったので、そこにテントを張りました。
ここは周囲にテントが張れる場所はなく、貸し切りの静かでいい場所でした。虫もあまりいなくて、テント設営中もほぼ気になるようなことはありませんでした。食事は入口をメッシュにしてテント内で済ませたので、虫にたかられるようなことは無かったのですが、テント外で食事をしていたら虫の被害にあっていたかもしれません。
ちなみに、小屋前を槍ヶ岳方面に行った左手にも河原にそってテントが張れる場所が並んでいます。
今回は、いつも使っているシルバーシートはやめて、4月の三室山から使っている片面にアルミ蒸着されたグランドシートをテント内のシルバーシートがわりに使いました。冬と違って地面からの寒さを気にする必要が無いので、少しでもかさばらないグランドシートにしたわけですが、クッション性がないこと以外はこれで何も問題はありませんでした。
テントの設営ができたら、すぐに夕食です。今回も食事はすべてアルファ米とフリーズドライの食品ばかりです。軽さ優先で味やボリュームは二の次ですが、長丁場ということもあり、ボリュームを増やしてタンパク質をとるために、高野豆腐も持ってきました。
高野豆腐は、味噌汁に入れて食べればそれなりにボリューム感が増して満足しました。アマノフーズのフリーズドライの親子煮もかなり美味で、十分満足感がありました。ちなみに、アマノフーズのフリーズドライは、ある程度冷ましたお湯(50度ぐらいか)であれば、容器のままお湯を注げばそのまま戻すことができるので便利です。メーカー推奨している方法ではありませんが、わざわざクッカーを使って戻さなくてもいいので助かります。熱いお湯だと容器が融けたりする可能性があるので、あくまでも熱めのお風呂ぐらいの温度のお湯を使うのがコツです。食べ終えた容器は折りたたんで平らにし、アルファ米の袋の中に入れて空気を抜いてジッパーを閉めれば、かさばらず匂いも出ないゴミ袋として使えます。
初日は、上高地からババ平までの歩行距離は約15㎞もありましたが、標高差は500mだったのでそれほどきつい登山という感じはありませんでした。しかし、穂高駅から上高地まで電車やバスでの移動があったので、けっこう疲れました。夕食後は、トイレと歯磨きを済ませたらさっさと寝袋にもぐりました。
真夜中に肌寒さで目が覚めたものの、丸まっていれば寒さも和らいできたので、特に何もしないでそのまま寝ることができました。しかし、それは標高がまだ2000mしかなかったからで、翌日以降、3000m級のテント場になると、丸まったぐらいではどうしようもないほどの寒さに襲われることとなったのです。
つづく。
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