「キエフにとどまる」と宣言しているゼレンスキー大統領。西側諸国からキエフを離れて亡命政権の樹立を持ちかけられても、応じる気はなさそうです。
アメリカがアフガニスタンを見捨てた時、飛行機にしがみついてでも国外に逃げようとする人々がいました。降伏したところで、待っているのは容赦ない粛清だから。
大統領役を演じるテレビドラマで人気を集めたコメディアンからリアル世界で大統領になり、今や「世界を魅了する千両役者」となったゼレンスキー大統領。ドラマ『国民の僕(しもべ』の初回が英語字幕付きでYouTubeにあり、つい見入ってしまいました。
演じる役は社会の教師。政治の汚職に対する非難を怒鳴り散らしているのを学生の一人がこっそり撮影し、ネットに動画を上げたため大問題となります。
ゼレンスキー先生は学生たちに日本の話をします。
「貧しい農民がエンペラー・パレスへ行き、『年貢が高すぎて村人たちが飢えている。私には失うものはないので、真実を告げに来た』と直訴した。訴えはエンペラーの心に届き、その場にいたサムライやゲイシャも衝撃を受けた。農民は直訴の罪で殺されたが、エンペラーは年貢の減額を決めた。エンペラーにとってどんなに不愉快な言葉であっても、真実は真実だからだ」
エンペラー・パレス? サムライがいるのだから、天皇ではなく将軍、あるいは領主? それにしてもゲイシャはいないだろう、と突っ込みどころが多いのですが、佐倉惣五郎などの逸話が元ネタでしょう。感銘を受けた学生たちは「先生は正しい、大統領選に出たら当選する」と励まし、ここからドラマが始まるのです。
ドラマシリーズの第一話。視聴率によってシリーズがどこまで続くかの大事な場面です。ゼレンスキーは何度も練習したでしょう。
キエフを離れないゼレンスキー大統領の脳裏には、飢えた村人のために自らの命を投げ打って直訴した日本の農民の姿が浮かんでいるのかもしれません。
All the world’s a stage
And all the men and women merely playersこの世は舞台
すべての男も女も役者にすぎない