斎藤知事を押し上げた「切り抜き動画」の高揚感 変わる選挙の風景

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後藤遼太 二階堂友紀
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 パワハラ疑惑が連日報じられていた斎藤元彦・兵庫県知事への印象が変わり始めたのは、9月末。失職直後のテレビ報道がきっかけだったと、神戸市の会社員の男性(22)は振り返る。

 「元々はイメージ悪かったけど、一人で駅頭に立つ斎藤さんをこきおろすのを見て、さすがに偏ってるんちゃうかと」

 毎朝、家族とテレビのニュースを見るのが日課だが、知事選が始まると、斎藤陣営のX(旧ツイッター)アカウントをフォローし、演説をチェックした。TikTok(ティックトック)では、同世代に人気の「踊ってみた」動画やお笑いの切り抜き動画に交じり、斎藤氏の演説が頻繁に流れた。

 表情や周囲の反応を見て「テレビが言うほど悪い人ではない」と感じるように。数百人が集まった駅前での演説にも足を運んだ。「これほど応援されているのか」。斎藤氏に投票した。

 期間中、新聞とテレビの報道は減り、SNSで他の候補者の情報はほとんど見かけなかった。一方、斎藤氏の動画は連日、大量に流れてきたという。

「コスパいい」政治ネタの切り抜き動画

 奈良県に住む男性(36)は、その作り手の一人だった。

 昨夏、ユーチューブチャンネ…

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この記事を書いた人
後藤遼太
東京社会部|メディア・平和担当
専門・関心分野
日本近現代史、平和、戦争、憲法
二階堂友紀
東京社会部
専門・関心分野
人権 LGBTQ 政治と社会
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    辻田真佐憲
    (評論家・近現代史研究者)
    2024年12月16日17時28分 投稿
    【視点】

    SNSや動画の話だけにとどまらず、さらに深い視点が盛り込まれているのがよいです。切り抜き動画の作成者について、たんなる収益目的だけでなく、政治や社会への不満が動機にあると指摘されているのは重要な視点でしょう。結局のところ、この不満を適切に扱

    …続きを読む