第17回政治介入防ぐ「壁」、菅氏は戻した 強まる司法への圧力
【動画】安倍政権とはなんだったのか――。7年8カ月に及ぶ「最長政権」の権力の源泉が、人事権をフル活用した官僚の統治でした。その内幕を長期連載でひもときます。
「未完の最長政権」第1部第17回
第2次安倍政権が始まってしばらくたってからのこと。官房長官の菅義偉は高等裁判所の人事について周囲に質問した。「以前は複数の候補を官邸に上げてきていたんじゃないか」
全国に八つある高裁のトップの長官人事。裁判所法40条では、最高裁の指名した名簿によって内閣が任命すると定めている。それまでは、最高裁側は、一つの長官ポストについて、ふさわしいと思う一人だけを上げていた。それに疑問を持っていた菅が過去の事例を独自に調べたのだ。
菅が調べた通り、一つのポストに一人の候補を最高裁が示すようになったのは、2010年の菅直人政権からだった。下野するまでの自民党政権、そして鳩山政権までは複数の候補を最高裁は示し、官邸が選んでいた。当時の経緯を知る関係者によると、官房長官だった仙谷由人が「複数の候補を挙げることができるのであれば、この人も候補に入れておいて欲しい」と官邸スタッフに要求したのだという。仙谷は弁護士でもあり、法曹界に広い人脈を持っていた。
プレミアムA「未完の最長政権」
「1強」と呼ばれた安倍政権は、強い官邸をめざした改革の到達点だった。しかし、それは後手に回ったコロナ対応の遠因にもなった。安倍政権の内実に迫る長期連載が始まりました。
官邸の事務スタッフの間で「…