第27回赤字でも配当、日本企業のフシギ 適正分配へ「株主還元に枠はめよ」
会計の仕組みを変えることで、従業員や役員、株主に適正な配分が可能になる。そうして企業社会を豊かにしよう――。そう訴える会計学者がいる。早稲田大のスズキトモ教授だ。低迷が続く日本の賃金を上げるにはどうすればいいのか。岸田政権の「新しい資本主義」の政策づくりにも関与していたというスズキ氏に聞いた。
――企業が生み出す付加価値の「適正な分配」を訴えています。どんな手法を考えていますか。
「企業は商品やサービスを提供し、付加価値を生み出します。このうち、株主に帰属する利益・配当に回る割合をあらかじめ決めておくのです。それ以上の付加価値が生産された場合、その余剰を役員と従業員で適切に案分します。ただし、従業員への配分は現金給付は一定レベルに抑え、残りはその会社の株式の形で給付します。そうすれば従業員所得を増やすと同時に事業や研究開発に投資することができます。役員や従業員は退職時に持っている株式を売却することもできます。士気が上がることでしょう」
――今までになかった発想ですね。
「日本経済は『失われた30年』と言われます。役員や従業員の報酬・給与と設備投資は停滞しています。一方で、配当や自社株買いという株主への還元は大きく伸びているのです。人的投資が抑制され、研究開発など中長期的に企業が必要とする安定的な資金が社外に出ていっていることを意味します」
「また、上場企業の株の3割は外国法人が持っており、富が国外に流出することが懸念されています。経済を盛り上げ、若者の生活を守るためには適正分配する経営が必要です」
鉄道大手、全社赤字でも配当
――利益を求める投資家に問題があるのでしょうか。
「機関投資家を責めるつもり…
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- 【視点】
日本人の賃金低下が深刻な状況となっており、今ほど、企業が生み出す利益の適正配分について関心が高まっている時代はありません。あらかじめ付加価値の適正配分を決めておくという考え方は、これまでの日本企業にはなかった発想であり、非常に興味深いもので
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