第1回「お前、食ってなかったな」ご飯2合、野球部のノルマで会食恐怖症に
給食を残さず食べることを強要する「完食指導」。子どもたちのなかには、プレッシャーから人前で食事をすることに不安や恐怖を感じる症状が出る子もいます。会食恐怖症の人の相談にのったり、教員への講演をしたりしている山口健太さんに話を聞きました。
――「会食恐怖症」とは?
医学博士の田島治杏林大学名誉教授(精神医学)によると、一般的に家族以外の人と外で食事をすることに強い不安を感じ、その不安を避けようとすることで友人関係や恋愛、仕事などに影響が出る状態が半年以上続くことを指します。
社交不安症(SAD)の一つに分類されます。
実際の会食の場面だけでなく、会食を想像しただけで吐き気やめまいがしたり、手足が震えたり、症状は人によってさまざまです。
――自身も、会食恐怖症だったそうですね。
もともと子どものころから、食が細いほうでした。
発症したのは高校生のときです。
部活で入った野球部が、食べることもトレーニングの一環という方針でした。
体づくりを大事にしていたので、体重が60キロなければバッティング練習はさせてもらえない、などの決まりがありました。
私は身長が160センチほどしかなく、小柄だったので大変でした。それでも、学校に大きめの弁当を持っていくなどして、自分なりに食べる量を増やす努力はしたんです。
そんななか、合宿では、朝2合、昼2合、夜3合のご飯を食べることがノルマとして課されました。
合宿の初日、昼食を完食できませんでした。
夕食のときに、監督からみんなの前で「お前、昼食ってなかったな」と怒られました。
それから、食事前に吐くようになりました。ご飯を口に入れても、ずっともぐもぐしたまま、のみ込めない。
全国の保育園で今年に入り、完食の強要や、給食を無理やり口に入れるなどの不適切な指導が相次いで発覚しました。子どもの心に傷を残し、大人になってからも影響を及ぼすことがある「完食指導」。何が問題なのか、専門家とともに考えます。
何で自分だけ食べられないの…
- 【視点】
「食事の場にも、心理的安全性」 このような意識は昭和の時代はなかったように思います。 出されたものはきれいに全部食べるべき、かつてはそんな風潮が主流でした。当時の天皇陛下が、サラダに虫が入っていたけれど全部召し上がられた、という都市伝説も
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